[P87-2] 高度肥満を伴う呼吸不全患者に対する腹部持続陰圧管理の試み
【背景】高度肥満患者では、腹腔内圧が高値となり横隔膜が圧迫され胸郭コンプライアンスが低下し呼吸不全を呈しやすい。また、その体格から体位変換が行いにくく、無気肺などの合併症に対する治療手段が限られる場合がある。動物実験において持続腹部陰圧管理は腹腔内圧を軽減することによりPEEPの補助として働き無気肺を改善させることが報告されている。ヒトにおける報告は少ないが、症例報告レベルで高度肥満患者の無気肺の改善やopen lungに有利に働くことが報告されている。今回、持続腹部陰圧管理を含めた介入により人工呼吸管理下での長期臥床が継続したにも関わらず無気肺の改善が得られた高度肥満を伴う症例を経験したため報告する。【臨床経過】55歳、男性。体重162kg、BMI52と高度肥満あり。フルニエ壊疽の診断で他院より緊急搬送され泌尿器科入院となった。全身麻酔下でデブリードマン施行後、全身管理目的に挿管人工呼吸器管理下で救命ICU入室となった。第2病日より理学療法開始。第8病日に胸部CTで背側無気肺を認めたが有効なポジショニングの保持が困難であったため、高機能ベッドを導入し逆トレンデレンブルグ肢位でのローテーション機能を開始した。第13病日より高度肥満による横隔膜圧迫軽減を目的として陽陰圧体外式人工呼吸器HRTX(United Hayek社製)を用いてContinuous Negativeモードで-20cmH2Oの持続腹部陰圧管理を開始した。低アルブミン血症を合併しており皮膚障害のリスクがあることを踏まえ1日2時間を目安に実施した。腹部持続陰圧管理中は一回換気量、SpO2、胸腔コンプライアンス、呼吸仕事量の上昇などの短期効果が確認されたが、長期効果を得られなかった。腹部持続陰圧管理中の有害事象は発生しなかった。第17病日に気管切開を施行。第42病日に胸部CTを再検し無気肺の改善を認め、第50病日にICUを退室した。【結論】持続腹部陰圧管理は、介入方法が限られる高度肥満を伴う呼吸不全患者に対して無気肺を改善する方法として有効であることが示唆された。