第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

呼吸 症例

[P87] 一般演題・ポスター87
呼吸 症例09

2019年3月3日(日) 11:00 〜 11:50 ポスター会場5 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:孫 麗香(大阪市立総合医療センター 救命救急センター・集中治療センター)

[P87-3] 成人心臓手術における吸入NOの使用状況-当院における5年間の経験より-

古市 結富子1, 蔭山 慎平1, 足立 匠1, 佐藤 真美子1, 森田 智教1, 清水 淳1, 坂本 篤裕2, 田辺 克也3, 原口 剛4 (1.榊原記念病院麻酔科, 2.日本医科大学麻酔科学教室, 3.榊原記念病院臨床工学部, 4.榊原記念病院集中治療室)

【はじめに】吸入NOは肺高血圧症のある成人心臓手術の人工心肺離脱時において有効な治療方法と報告されている.1)2) 実臨床では, 肺高血圧症のない患者に対しても吸入NOを用いることがある. この研究の目的は, 成人心臓手術における吸入NOの使用状況と有効性を調査することである. 【方法】本研究は後ろ向き研究である. 診療録を後ろ向きに調査した. 当院では初診時に診療に関する情報の一部を, 後ろ向き観察研究および発表において使用することに関して書面での同意を得ている. 同意を得られない場合にはデータの収集を行っていない. 【結果】2013年から2017年の5年間に当院で人工心肺を用いた心臓手術を行った症例数は5236であった. うち成人心臓血管手術は3327症例, 先天性心臓血管手術は1909症例であった. 人工心肺離脱時からNOを用いた症例は,成人心臓手術で16症例(0.5%), 先天性心臓血管手術で104症例(5.4%)であった. NOを用いた成人心臓手術症例は平均年齢65.6歳, 13症例(81%)が緊急手術であった. 術式の内訳は大動脈解離5症例, 大動脈弁疾患3症例, 僧帽弁疾患3症例, 胸部大動脈破裂2症例, 胸部大動脈瘤2症例, 心室中隔穿孔1症例であった. 平均人工心肺時間は231分であった. 術前より肺高血圧症があると診断されたのは2症例であった. NO使用前後のPF比とSpO2の変化はそれぞれ67.1 から138.5, 89.9%から97.4%であった. NO平均使用時間は 14.5時間であった. 副作用はみられなかった. 周術期死亡率(30日間)は44% (7症例)であった. 死亡原因は脳梗塞4症例, 多臓器不全2症例, 出血1症例であった. 【考察】成人心臓手術におけるNO使用頻度は先天性心臓血管手術に比べて低かった. また、術前に肺高血圧のない症例に対しても用いられていた. NO使用患者における周術期死亡率は高かったが, より重症な症例に対して用いられている可能性がある.【参考文献】1)Fullerton DA, McIntyre RC. Inhaled nitric oxide: Therapeutic applications in cardiothoracic surgery. Ann Thorac Surg 1996;61:1856-64.2)Snow DJ, Gray SJ, Foubert GL, Oduro A, Higenbottam TW, Wells FC, Latimer RD. Inhaled nitric oxide in patients with normal and increased pulmonary vascular resistance after cardiac surgery. Br J Anaesth 1994;72:185-9