第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

呼吸 症例

[P87] 一般演題・ポスター87
呼吸 症例09

2019年3月3日(日) 11:00 〜 11:50 ポスター会場5 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:孫 麗香(大阪市立総合医療センター 救命救急センター・集中治療センター)

[P87-4] 急性大動脈解離術後の酸素化障害に対して一酸化窒素吸入療法を施行した2例

森下 寛之, 江連 雅彦, 長谷川 豊, 山田 靖之, 星野 丈二, 岡田 修一, 金澤 祐太, 加我 徹 (群馬県立心臓血管センター 心臓血管外科)

【背景】大動脈手術後の酸素化障害はしばしば経験する合併症であるが、その機序については不明である。酸素化障害の改善に一酸化窒素吸入療法(iNO)が有効であるとする報告が散見され、当院で経験した症例を報告する。
【症例1】71歳女性。DeBakey I型急性大動脈解離に対し、上行大動脈人工血管置換術を施行した。術後ICU帰室時は気管挿管人工呼吸管理下でP/F ratio 79.1と低値であり、一時的に改善を認めたが、24時間後に67.8まで低下したためiNOを開始した。開始後3時間でP/F ratio  121.5まで改善し、FiO2 0.5まで下げられた段階で一酸化窒素(NO)を漸減し、開始から31時間後にNOの投与を終了した。術後96時間で抜管し、以後は非侵襲的陽圧換気療法を一時的に使用したが、再挿管はなく良好な経過を得られた。
【症例2】79歳女性。DeBakey II型急性大動脈解離に対し、上行部分弓部大動脈置換術を施行した。術直後の血液ガス検査でP/F ratio 76.3であり、iNOを20ppmで開始した。3時間後には120、8時間後には190に改善し、同様にFiO2 0.5の段階でNOを漸減した。開始から38時間後にP/F ratio 270まで改善し、NOの投与を終了した。術後41時間で抜管し、一時的に非侵襲的陽圧換気療法を使用したが術後5日目にICUを退室した。
【結論】大動脈解離術後の酸素化障害に対するNOの作用機序については、肺内シャントの軽減や換気血流比不均等分布の改善と報告されている。大血管術後で循環動態が不安定な状況でも血圧など循環に悪影響を及ぼすことなく使用でき、酸素化改善に有効であった。今後、無作為化比較試験などでその有効性、安全性を示していく必要があると思われる。