[P87-5] 膵炎治療経過中に発症したARDSに対しVV-ECMOを施行した一例
【背景】今回、膵炎治療の経過中に発症した急性重症呼吸不全に対し、約41時間のECMO管理を行い、救命し得た症例を経験したので報告する。【臨床経過】25歳女性。既往は糖原病1型、高TG血症、高血圧、生体腎移植術後、重症急性膵炎。膵炎に対して膵管ステント留置試行もステント閉塞による膵炎を繰り返し頻回の入院歴がある。今回も膵管ステント閉塞による膵炎の診断で入院し、同日ステント交換、絶食補液にて改善した。第40病日食事再開し、腹痛が再発、膵酵素の上昇あり、膵炎の再燃の診断で抗生剤加療再開となった。第42病日発熱、酸素化低下あり酸素投与開始、胸部CTですりガラス影、両肺野にびまん性の浸潤影、胸水・心嚢液を認めた。呼吸苦増悪を認め、意識JCS1、体温38.5℃、脈拍122回/分、血圧149/92 mmHg、呼吸30回/分、Sat86%(リザーバー10L)、動脈血ガスにてpH 6.983, PaO2 68.3 Torr, PCO2 40.9 Torr, BE -19.6 10.3mmol/L, lac 9.5 10.3mmol/Lと1型呼吸不全を認めた。PF ratio85であり、気管挿管、人工呼吸器管理とし、全身管理目的にICU転床となった。血液検査はWBC 10900/μL, CRP 4.3mg/dL, PCT 0.49ng/mL, Hb 7.8g/dL, Plt 24.8/μL, PT比 1.3, FDP 10.2μg/mLであり、SOFA score7点 急性期DIC score 2点、APATCH II score 20。呼吸不全の原因として膵炎や肺炎に伴うARDSと診断。また急変2時間後の心電図にてV1-4誘導で陰性T波の出現、心電図で心尖部の壁運動低下あり、たこつぼ心筋症による急性心不全の合併が考えられた。免疫抑制剤使用中、多数の入院歴、抗菌薬使用歴あり、非定型肺炎や真菌性肺炎の可能性も考慮しTAZ/PIPC・MCFGを開始した。心不全に関してはISDNとfurosemideを開始した。挿管後も呼吸状態改善乏しく、PF ratio116(FiO2 1.0, PEEP 15)、Murray score3であり、低酸素血症改善目的にVV-ECMO導入となった。入床第2病日尿量0.08/kg/hrとなりCHDF開始した。入床第3病日PF ratio362となり、VV-ECMO離脱、入床第6病日抜管した。抜管後呼吸状態は安定していたが入床第8病日血圧上昇し肺水腫様症状を呈した。CS1の急性心不全を考えニカルジピンによる降圧を行い呼吸状態は改善した。入床第9病日高血圧・心不全の精査加療目的に循環器内科一般病棟転科となった。【結論】VV-ECMOの早期導入を含む集学的治療を行うことにより速やかな酸素化改善を得ることができた。