[P87-6] 【優秀演題(ポスター発表)】ミニトラックII®を介してIntrapulmonary Percussive Ventilation (IPV)を実施した1例
【背景】Intrapulmonary Percussive Ventilation(IPV)は,加湿された噴流小換気団を高頻度で肺内に送ることによって,気道分泌物を流動化して排痰を促進する.また,ミニトラックII®セルジンガーキット(Portex®,Smith Medical,UK)は輪状甲状穿刺を目的とした小径の気管チューブであるが,手術後や人工呼吸管理下の患者において,抜管後の気道分泌物貯留を回避するための予防的挿管という適応でも有用である.今回,外傷性横隔膜損傷後の横隔膜機能不全に対して,ミニトラックII®を介してIPVを行ったので報告する.【臨床経過】82歳男性,横隔膜ヘルニアを伴う外傷性左横隔膜損傷に対して閉鎖術を施行した.術後,横隔膜機能不全による左横隔膜挙上と左肺下葉の無気肺が遷延したため,第14病日より連日IPVを施行した.次第に無気肺の改善を認め,第18病日に人工呼吸器から離脱した.抜管直後よりNasal high-flow(NHF)療法を開始し,ミニトラックII®を留置して気道分泌物の吸引を行ったが,徐々に左肺下葉の無気肺が増悪した.IPVを再開する方針としたが,患者が高齢でマウスピースの保持が困難であり,多量のリークを認めたため,回路をミニトラックII®に接続して施行した.第32病日まで連日IPVを実施し,酸素需要が低下したため一般病棟へ転棟した.その後呼吸器合併症なく経過し,第105病日に退院となった.【結論】外傷性横隔膜損傷後の横隔膜機能不全の患者に対し,ミニトラックII®に回路を接続してIPVを施行した.高齢者や筋力低下のある患者にIPVを施行する場合,ミニトラックII®を介した方がマウスピースやマスクを使用するよりも患者の負担が軽減され,またリークが少ないため気管内に効率よくパーカッション流を送ることができると考えられる。