[P88-3] くも膜下出血初期治療プロトコール導入の試み
【背景】当センターは1次~3次救急まで受け入れるER型システムであり、初療医(ER総合診療科医と各科ローテータ-医師)が初期対応を行い、各科の専門医にコンサルトを行う体制である。意識障害での搬入の場合にCT撮影や脳外科医へのコンサルトのタイミングが症例ごとに異なり、脳動脈瘤同定までの初期対応に時間を要したり、脳動脈瘤根治治療術までの降圧、鎮静・鎮痛の管理が統一されておらず、予後不良の一因となったと懸念される症例が見られていた。そのため、多職種の役割を明確にし、迅速な初期治療と厳密な血圧管理と鎮静・鎮痛が行われることで再破裂を予防し、患者が良好な転帰を迎えることができるようにSAH初期治療プロトコールを作成し、導入を開始したので報告する。【目的】1.SAH初期治療プロトコールを作成、導入し、統一したSAH患者の再破裂予防を図る。2.プロトコール導入の効果を検討する。【方法】各診療科医師と初療看護師、EICU看護師が集まり、SAH治療プロトコール作成の話し合いを行った。降圧・鎮痛・鎮静について、開始するタイミングと根治治療術前後の目標値を設定し、明示した。また、初療搬入時、SAH診断後、挿管・全身麻酔管理時とそれぞれのフェーズでの責任医師を明確にすることで、医師の指示出しがスムーズに行われ、現場での混乱を生じないようにした。3DCT撮影は挿管麻酔管理下での撮影を基本とし、麻酔科医が対応困難時の判断は脳外科医が行うことと明示した。さらに、初療看護師の役割についても速やかに準備と実施が行えるように、確認の項目を設けた。【結果】プロトコール導入後の患者数は7月~9月で5人。頭部CT撮影でSAHが見られた場合、プロトコールに沿って速やかに降圧と鎮痛を行い、再破裂予防のための呼吸・循環管理を行った上で3DCT撮影と脳動脈瘤根治治療術までの待機を実施できている。導入後は挿管、未挿管に関わらず再破裂を生じた症例はない。医師、看護師、放射線技師などの役割を並列に可視化することで、搬入時からの他職種の動きを把握しながらそれぞれの役割を遂行することが可能となった。【結論】初療対応から脳動脈瘤根治治療術前後においてプロトコールで明示されている降圧、鎮静、鎮痛の目標値での管理が行われ、再破裂を招くことなく経過しており、プロトコール導入の有用性が高い可能性がある。