[P88-4] 複数の生命維持装置使用を想定した患者搬送シミュレーションの経験
【背景】当院臨床工学部は現在17人が所属し、2015年度からの宿直体制下、ICU担当者をリーダーに業務ローテーションを行っている。ICUでは生命維持装置の操作・設定管理を担当しており、今回、劇症型心筋炎により他施設でのVAD導入を検討された症例に対し、補助循環など複数の生命維持装置を装着下、放射線画像による精査及び他施設への救急搬送を実施するにあたり、搬送時のトラブル回避を目的に医師を中心とした多職種連携した患者搬送シミュレーションを行ったので報告する。【臨床経過】患者搬送シミュレーションを対象とした主治医・ICU看護師・臨床工学技士(以下:CE)による各職種別に役割分担を行うためのスタッフ会議を実施。主治医(全体リーダー・急変対応)、ICU看護師(ライン管理・バイタルサイン確認・経路誘導)、CE(機器機材準備・搬送中の機器トラブル対応)とし、スタッフ7人による実際の治療環境と同等にした患者搬送シミュレーションを行った。CEは人工呼吸器やPCPS及びIABP移動の他、各医療機器のバッテリー駆動時間やAC電源の確保場所、酸素ボンベ残量、ハンドクランプや致死性不整脈に対する除細動器の準備など2人で対応した。シミュレーションではエレベータ内が狭くストレッチャーや各医療機器が入らなかった為、人工呼吸器は用手換気へ切り替え、エレベータ移動後にポータブル人工呼吸器へ戻すことで対応可能とした。シミュレーションでは計1時間ほど要したが、実際の搬送時は各職種間での役割分担を明確化したことにより、バイタルサインの変動や機器トラブルもなく約40分で終了した。【結論】当院では人工呼吸器装着下での患者搬送が多いことから、マニュアル整備はされていたが、補助循環装置を含めた複数の医療機器使用中の超重症例は想定していなかったため、実際にエレベータ内に入らなかった事も含め、救急車内への移動も考慮した補助循環装置使用中の搬送マニュアルも作成し、関連スタッフによるシミュレーショントレーニングも継続していく必要がある。今回、放射線画像診断結果よりVAD適応がなく搬送は中止となったが、集中治療領域においては多職種間での協力・連携は不可欠であることから、今後もチーム医療の一員として各職種とコミュニケーションを図りつつ、あらゆる場面でも対応できるよう取り組んでいきたい。