[P9-4] ショック、多臓器不全を呈し、救命し得たC. perfringensによる感染性腸炎の1症例
【背景】ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)は、芽胞形成性嫌気性グラム陽性桿菌である。腸管内常在菌であり大部分は非病原性だが、一部は本菌が腸管内で増殖し芽胞を形成する際に産生する毒素により重篤な感染症を引き起こす。本菌による感染症は、外傷性としてガス壊疽や壊死性筋炎、非外傷性として食中毒、子宮·腸管·肝胆道系感染症がある。食中毒以外の非外傷性症例は予後が悪く、短時間で急激に悪化し死亡する例が多い。今回、発症から16時間の経過で急激に重篤化したが救命しえたC. perfringens敗血症の症例を経験した。【臨床経過】症例は84歳女性。夕方から腹痛、下痢、嘔吐が出現し、翌朝も同症状が続きショックとなったため、往診医からの依頼で、発症16時間後に当院救急搬送となった。血圧56/38mmHg、SpO2 93%(O2 10 L/min)、qSOFA 3点で敗血症を疑い初期診療を開始した。BUN177mg/dl、Cre7.9mg/dl、CRP20mg/dl、WBC11200/μL、CTで軽度腸管拡張と腸液貯留を認めた。便培養でC. perfringensが同定された。感染性腸炎による敗血症性ショック、多臓器不全の診断で集中治療を行い、第32病日に軽快退院となった。【結論】本邦での非外傷性C. perfringens感染症は年間1-2例の頻度で報告されている。とくに敗血症、血管内溶血やDIC、腸管·門脈気腫症、腸管壊死を伴うと死亡率が高い。高齢者や在宅医療の現場では、病歴聴取が困難な状況もあるため、下痢·嘔吐に伴う重症病態では、本症を鑑別に入れた初期対応が重要である。