[P92-2] 末梢留置型中心静脈カテーテルの胸腺静脈迷入例
【症例】5歳男児。腹痛と紫斑の出現を主訴に小児科受診。IgA血管炎の診断で薬物治療が開始された。摂食不良でアルブミン低値となり浮腫が増強し、血管確保困難となった。経静脈栄養、薬物投与目的でカテーテル留置の依頼があった。末梢留置型中心静脈カテーテル(以下PICC)を、超音波装置、透視装置を使用し左尺側皮静脈より先端が右房入口に存在するよう留置した。挿入2日後、薬物を単回投与したところ一過性の強い前胸部痛を訴えた。胸部X線写真で縦隔陰影の拡大があり、心タンポナーデを疑い検索したものの心嚢・胸腔内には液体貯留なく、血圧低下もみられなかった。CTにて、カテーテル先端は縦隔内にあることが判明し血管外の逸脱が疑われた。縦隔はカテーテル周辺がびまん性に腫大していたが液体のpoolingの所見はなかった。貧血の進行、血圧低下など出血を疑う所見はみられなかった。縦隔内組織内迷入を疑い、緊急時の開胸手術の手配の上、カテーテルを慎重に抜去した。その後ICUで経過観察を行った。抜去後も血行動態の変化なく翌日のCTでは縦隔陰影の腫大は改善していた。IgA血管炎は寛解し入院20日後に自宅退院となった。【結論】PICCが縦隔内に迷入した原因として、様々な肢位により先端が移動し胸腺静脈に迷入したものと考えられた。小児は運動が活発でまた遠位の静脈の距離も短いため、先端が移動し、分枝へ迷入する危険性は高いと考える。類似症例として中心静脈カテーテルが胸腺静脈に迷入した乳児例が報告されている。PICC挿入時に分枝静脈に先端が迷入する例はしばしば経験するが、挿入後も発生しうる合併症として留意すべきである。