第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

血液浄化

[P96] 一般演題・ポスター96
血液浄化01

2019年3月3日(日) 11:00 〜 11:40 ポスター会場14 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:井上 義博(岩手医科大学医学部救急・災害・総合医学救急医学分野)

[P96-3] ヘパリン起因性血小板減少症による持続的血液濾過透析維持困難例に対し,透析膜変更が奏効した1症例

松井 祐介1, 松岡 宏晃1, 金本 匡史1, 渋谷 綾子1, 室岡 由紀恵1, 大高 麻衣子1, 竹前 彰人1, 高澤 知規1, 日野原 宏1, 齋藤 繁2 (1.群馬大学 医学部 附属病院 集中治療部, 2.群馬大学 大学院 医学系研究科 麻酔神経科学)

【背景】HITは,血小板第 4 因子(PF4)とヘパリンとの複合体に対する抗体(抗PF4/H抗体)の産生が起こり,その中の一部で強い血小板活性化能を持つもの(HIT抗体)が,血小板,単核球,血管内皮の活性化を引き起こし,最終的にトロンビンの過剰産生が起こり,血小板減少,さらには血栓塞栓症を誘発する。治療には,まずはヘパリンの使用を中止することに加え,抗トロンビン作用を持つ代替抗凝固療法 (アルガトロバン) が必要である。今回我々は体外式膜型人工肺を用いた心肺蘇生後にヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia , HIT)を発症し,回路内凝血により持続的腎代替療法の継続が困難であったが,透析膜の変更で治療を継続することができた1症例を経験したため報告する。【臨床経過】我々は,体外式膜型人工肺を用いた心肺蘇生後にHITを発症し,除水ならびに血液浄化目的に、持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration, CHDF)が必要となり,ポリスルホン,セルローストリアセテートの透析膜を用いても,血栓による閉塞を頻回に起こし、回路交換による中断をせざるを得なくなり,管理に難渋する症例を経験した。本例は,ヘパリン中止,アルガトロバンによる全身の抗凝固療法と,ナファモスタットを用いた回路内の抗凝固療法を併用し,活性化凝固時間を延長させたにもかかわらず,頻回な回路閉塞によりCHDFの継続は困難であった。しかし,高い親水性をもった厚い柔軟層を有するポリスルホン製の透析膜のダイアライザー (商品名:トレライトNV) を用いた持続的血液透析および体外式限外濾過療法より,比較的長時間の腎代替療法を行うことができ,除水を継続することができた。【結論】HIT患者においても,ダイアライザーの種類を変更することで,腎代替療法を継続することができた。水分管理が困難であった場合,酸素化不良による静脈返血での体外式膜型人工肺(V-V ECMO)が考慮されたが,本症例では導入を必要とするまでには至らず,重篤な合併症を回避することができた。