[P99-6] 多職種協働による呼吸理学療法が有効であった急性呼吸不全を呈したI型脊髄性筋萎縮症の1例
入院時11ヶ月、女児。在胎41週6日、3554gで帝王切開にて出生。出生時および生後1ヶ月健診では異常を認めなかったが、1ヶ月半頃から下肢の動きが減少し、生後4ヶ月に筋力および筋緊張低下を認めたため当院受診し、遺伝子検査で脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy: SMA)1型と診断した。その後、ヌシネルセンを定期投与していたが、生後8ヶ月に急性呼吸不全で入院し、口腔内唾液持続吸引、咳嗽介助機器(mechanical in-exsufflation: MI-E)を在宅導入して自宅退院した。今回、生後11ヶ月に発熱、低酸素血症を認め、急性気管支炎の診断で当院小児科に入院した。去痰薬、短時間作用型吸入β2刺激薬(SABA)、MI-E、酸素投与を行っていたが、入院3日目にレントゲン上右無気肺を認め、βラクタマーゼ阻害薬、合成副腎皮質ホルモン薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬を追加した。入院4日目にさらに呼吸状態悪化し、高二酸化炭素血症を認め、NPPVを開始したが、入院5日目、低酸素血症に加え循環動態悪化を認めたため、人工呼吸器管理とし、呼吸理学療法を開始した。挿管後、ご家族へ気管切開術に対する説明を行ったが希望されず、抜管を目指す方針となった。右無気肺に対し、右上2/3前傾側臥位にて左胸郭を固定し、気道内圧30mmHg以下にてManual Hyperinflation(MH)を2回/日と2時間の腹臥位を2回/日行い、吸引にて分泌物は喀出されていたが、右無気肺の改善は乏しかった。入院18日目にCTで画像評価を行い、背側の無気肺は改善していたが、右上葉に無気肺残存を認めており、医師と理学療法士、看護師が協働してベッドアップ30°右上側臥位にて左胸郭を固定したMHを行なった結果、即時的に多量の分泌物の喀出を認めた。医師の指示のもと、理学療法士により母親と看護師に胸郭の固定法、MH、吸引のタイミングなどの排痰指導を行い、家族を含め多職種で呼吸理学療法を協働した結果、入院27日後に右無気肺の改善を認めた。その後徐々にウィーニングを進め、入院42日目に人工呼吸器離脱した。抜管後はNasal High Flowで呼吸管理を行い、MI-Eを4回/日実施した。吸入や腹臥位、MI-E、抱っこ、ベビーカー乗車などの1日の治療計画を多職種で協働して行い、入院61日目に自宅退院となった。人工呼吸器管理が必要となったSMA患者の呼吸管理には、多職種で協働した呼吸理学療法が無気肺の改善および再発予防に有効であった。