第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

Pros & Cons

[PC2] Pros & Cons2
感染症治療最前線1:プロカルシトニンを抗菌薬中止の指標に用いるか否か?

2019年3月2日(土) 14:00 〜 14:40 第4会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール2)

座長:藤田 直久(京都府立医科大学附属病院感染対策部), 牧野 淳(横須賀市立うわまち病院集中治療部)

[PC2-1] プロカルシトニンを抗菌薬早期中止の指標に用いる

太田 浩平 (広島大学大学院 救急集中治療医学)

ARS(視聴者参加型アンケートシステム)使用】

抗菌薬の使用量は薬剤耐性(AMR: AntiMicrobial Resistance)と関係があることが知られており,厚生労働省の示すAMR対策アクションプランにも抗菌薬使用量の把握が含まれている (BMC Infect Dis. 2014; 14: 13).血清プロカルシトニン値を指標に抗菌薬中止を検討すること(以下,プロカルシトニンアルゴリズム)で従来の標準的な治療期間を短縮しうることが複数の研究で示されており,抗菌薬使用量の低減に繋がると期待されている.本ProConでは,抗菌薬中止の指標としてプロカルシトニンを用いるべき,という立場で論じたい.

PRORATA trial (Lancet. 2010; 375(9713): 463-74.)では,フランスの8つのICUで感染症が疑われた患者630名を対象に,プロカルシトニンアルゴリズムを用いることで抗菌薬使用日数を全体で2.7日(95%CI 1.4 - 4.1)短縮しえた.また,28日死亡率や感染の再燃については従来の治療期間と比較しても非劣性であった.

本研究は対象患者の7割が呼吸器感染症患者で,他部位の感染臓器患者は少数との指摘があるが,ICUにおいて最も抗菌薬を使用されるのは肺炎であり,その投与期間短縮効果は大きい.また,尿路感染症も7日程度の投与期間であり,菌血症を伴っていても7日間の投与でも良いとするメタアナリシスの報告と一致する (J Antimicrob Chemother. 2013; 68(10): 2183-91.).原因菌の割合やフランスの薬剤耐性率も院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)の結果と類似しており,本邦と大きな環境の違いはみられない.

Open ICUが多く感染症医も不足している本邦において,抗菌薬処方は主治医任せであることが多い.ICUでの抗菌薬スチュワードシップの一手としてプロカルシトニンアルゴリズムを用いることは,ICU全体の質向上及び抗菌薬使用量の低減に繋がると考える.