[PD1-3] 証人として法廷に立つ前に
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証人の供述は裁判の行方を左右する重要な証拠である。そのため(あらかじめの打診はあるにせよ)召喚されれば出頭するのは国民の義務であるし、証言にあたっては「嘘偽りなく」述べることを宣誓することになる。 証人に対する尋問は、まず自分を証人として呼んだ側からの主尋問と、それに対立する側からの反対尋問が行われ、そのあとに裁判官からの補充尋問がある。証言は裁判官に対して行うものなので、主尋問と反対尋問は自分の左右からなされるが、それらに対する回答は、自分の正面にいる裁判官に対して行う。これは慣れないといささかやりにくい。 メモなどを見ながら答えることは認められていないので、主尋問のときは前もって打ち合わせができるためさほど困らないが、反対尋問においては想定外の質問が来ることも多い。そうした場合には質問の意図を憶測で思い込んで答えるのではなく、法廷内に用意されている書証を確認するとか質問の趣旨を確認してからとかの後に、自分の知る範囲できちんと答えるべきである。論語で「不知為不知。是知也。」というように、知らないことは知らないと答えるのが誠実な態度である。 証言内容は後になって録音から書き起こされるので、極端な小声、早口、あいまいな物言い、間投詞の多用は避けるべきであり、また同音異義語や英語の略語なども避けるように努力し、不可避な場合には字を説明するなどの配慮をする。ただ最近はパワーポイントによる供述が許されるなど、やりやすくはなっている。画像診断が争点であるような場合には、当然、シャウカステンないし大画面のディジタル画像を見ながら供述する。状況としては、学会の一般演題発表、パネルディスカッション、Pro & Conなどと部分的に似たところがあり、学会活動をしている医師にとっては、証人としての出廷はそれほど敷居が高いものではないだろう。ただ聞き手のほとんどに医学的知識はない。 実際に証人になった場合の心がけとしては、1)ドタキャンしない、2)遅刻しない、3)偽証しない、4)裁判官に納得してもらうことが目的であることを認識し、平易で分かりやすい説明を心がける(独善的な説明ではいけない)、5)あいまいな物言いはせずに論理的に話す(パワーポイントのメリットの一つは典拠を逐一記載できることだ)、6)対立する側の当事者やその代理人に対して個人攻撃をしない、7)初対面の人にでも信頼感を得られるような服装、立ち居振る舞いを心がけよ、というあたりだろうか。