[PD15-2] 多剤耐性緑膿菌(MDRP)
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緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)はICU患者の感染症の最多の原因微生物の一つである。緑膿菌は腸内細菌科細菌と比較して数多くの染色体性の抗菌薬耐性メカニズムを備えているため、外因性の耐性因子獲得がなくとも長期の治療経過の中で耐性化が進みやすい。一方で、他のグラム陰性桿菌と同様に、外因性に耐性因子を獲得する場合もある(その一例として、カルバペネムをはじめとしたβ-ラクタム薬ほぼすべてを無効化するメタロ・β-ラクタマーゼの産生がある)。これらの機序により多剤耐性緑膿菌(Multidrug-resistant P. aeruginosa:MDRP)が形成される。なお、感染症法の届け出対象(5類・基幹定点医療機関)となる「薬剤耐性緑膿菌感染症」はイミペネム、シプロフロキサシン、アミカシンの3薬剤の耐性により判定されるが、治療上は「ピペラシリン(・タゾバクタム)」「抗緑膿菌作用のあるセファロスポリン」「カルバペネム」「キノロン」「アミノグリコシド」の5系統のうち3系統以上で(各系統1薬剤でも)耐性がみられるものをMDRPと捉えておくのが有益と思われる(文献を検索する際に、研究ごとにMDRの定義が異なりうることには注意を要する)。
MDRPによる感染症の治療に際しては感受性のある薬剤を一つ、あるいは複数選択して投与することになる。古典的には緑膿菌感染症治療においては複数薬剤による治療が好まれていたが、近年はその有益性に疑問を投げかける研究結果も多い(複数薬剤を用いることにより、より多くの系統の薬剤に対する耐性菌の選択増殖を招きうるというトレードオフの側面もある)。標準治療薬の中に感受性のある薬剤が存在しない、あるいはほとんどない場合にはコリスチンが治療薬として選択されうるが、同薬剤の適切な投与量についても不確かな部分がある。近年になり、MDRPに活性を有する新規抗菌薬の開発も進んでおり、これらも今後の選択肢として期待される。
MDRPによる感染症の治療に際しては感受性のある薬剤を一つ、あるいは複数選択して投与することになる。古典的には緑膿菌感染症治療においては複数薬剤による治療が好まれていたが、近年はその有益性に疑問を投げかける研究結果も多い(複数薬剤を用いることにより、より多くの系統の薬剤に対する耐性菌の選択増殖を招きうるというトレードオフの側面もある)。標準治療薬の中に感受性のある薬剤が存在しない、あるいはほとんどない場合にはコリスチンが治療薬として選択されうるが、同薬剤の適切な投与量についても不確かな部分がある。近年になり、MDRPに活性を有する新規抗菌薬の開発も進んでおり、これらも今後の選択肢として期待される。