第46回日本集中治療医学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD2] パネルディスカッション2
各領域研修において集中治療は織り込まれているか?

Fri. Mar 1, 2019 9:40 AM - 11:40 AM 第3会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール1)

座長:福井 道彦(音羽病院集中治療部), 松田 兼一(山梨大学医学部救急集中治療医学講座)

[PD2-7] 麻酔領域専門研修プログラムにおける集中治療研修

貝沼 関志 (稲沢市民病院 麻酔・救急・集中治療部門/名古屋大学外科系集中治療部)

集中治療専門医は専門各科医の知識や技術を引き出しながら患者に最高度に良質のアウトカムを与える医療を提供するためのコマンダーである。麻酔科専門医は全身麻酔や区域麻酔において一臓器不全や敗血症病態に起因する多臓器障害を管理する能力を要求される。それは急性期の生命危機状態を乗り切るために一臓器不全を超えて多臓器の臓器連関も全て掌握する総合医療であり集中治療に直結するものである。集中治療では、手術当日の最大の侵襲時だけでなく、ICU退室までまたそれ以後も、アウトカムの見込みがつくまで診療し、その過程で、毎日患者・ご家族に説明し共に喜び悲しみ時には謝ることもある。患者・家族からの無形の感謝は多いが時には叱責されまた励まされる。医師として当たり前の過程である。集中治療を経験すると、麻酔が元々如何に高度の技術であったかということにも気づき、麻酔で得た技術の尊さも知る。手術室のなかの専門家であったかもしれない麻酔修行の細い道が、実は手術室の外でも患者さんのどなたにでもどんな重症の御病気でも診断治療のできる医師になることに通ずる広い道への最短コースになりうることに気づかされる。しかし、手術室での麻酔修行だけでは殆ど学べないものが集中治療に存在する。すなわち、1、CT,MRIを含めた画像診断 2、感染症、敗血症の診断治療 3、手術という無菌的侵襲が炎症を生むことの意味の掘り下げ 4、手術室での手技を超える高度の診療スキルの習得(輪状甲状靭帯穿刺・切開、気管切開、胸腔ドレナージ、PCPS、ECMO、IABP等の手技の習得)である 5, 体液バランス経日的把握と血液浄化療法の実施 6, 蛋白異化に抗する栄養管理、などである。麻酔領域専門研修プログラムにおいて集中治療研修はもちろん組み込まれているが、それは、ある期間は手術室での麻酔を離れて24時間365日集中治療に入り浸りになることで初めて身に着くものである。この期間は、麻酔も時々行う日替わりICUでは上記1から6は身に着けることができない。また、麻酔領域専門研修プログラムにおいて集中治療研修が、術後管理に限定される傾向があるのは憂慮すべき事柄である。集中治療専門医たるもの、ERから日常的にICUに搬入されてくる患者の診断、治療を行える能力は必須である。集中治療医は、古き時代、各科救急が限界に達し、あらたな急性期の蘇生や総合的な診療のできる医師として誕生した歴史を忘れてはならない。