第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD7] パネルディスカッション7
集中治療における多臓器機能とバイオマーカー

2019年3月2日(土) 14:00 〜 15:30 第5会場 (国立京都国際会館1F Room D)

座長:佐藤 直樹(日本医科大学武蔵小杉病院内科・循環器内科・集中治療室), 松田 兼一(山梨大学医学部附属病院集中治療部)

[PD7-3] 敗血症診断におけるPCTとプレセプシンの有用性

山本 朋納, 溝端 康光 (大阪市立大学大学院医学研究科救急医学)

同時通訳付き】

2016年に敗血症の新定義(Sepsis-3)が発表され、感染によりSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアが2点以上急に上昇し、臓器不全を合併した病態が敗血症と定義された。しかし、急性期においては感染の有無の判断は難しく、敗血症の診断が困難なことが多い。そこで敗血症の早期診断を目的として様々なバイオマーカーの研究が行われているが、日本版敗血症診療ガイドライン2016で推奨されているバイオマーカーはプロカルシトニン(PCT)とプレセプシンの2種類だけであり、臨床現場においてPCTとプレセプシンの重要性は高まっている。
敗血症診断におけるPCTとプレセプシンの有用性を比較したメタ解析では統計的有意差は認めなかったが、PCTよりもプレセプシンの感度は高く、特異度は低く、AUCはほぼ同程度であった(感度; 0.74 vs. 0.84, 特異度; 0.79 vs. 0.75, AUC; 0.86 vs. 0.87; PCT vs. プレセプシン) (Intensive Care (2017) 7: 91)。敗血症診断においてプレセプシンはPCTと同等に有用と考えられるが、Sepsis-3における有用性については明らかでない。
そこでPCTとプレセプシンのSepsis-3における敗血症診断能について当施設で研究を行った。SOFAスコア2点以上を満たした患者91例を、敗血症群 (62例)、非敗血症群 (29例)に分け、診断マーカーについてROC解析を行った。さらに敗血症群をseptic shock群(33例)、sepsis群 (29例)に分けて比較検討した。敗血症の診断マーカーとしてプレセプシン、PCT、CRP、白血球数(WBC)を測定した。敗血症群と非敗血症群を区別するためのROC曲線下面積(AUC)はプレセプシンが0.88であり、sepsis群と非敗血症群を区別するためのAUCは0.90で、PCT、CRP、WBCのAUCよりも高かった。また、他の診断マーカーを考慮した多変量解析(ロジスティック回帰分析)を行ったところ高プレセプシン値(≧600 pg/ml) は敗血症群と非敗血症群を区別し(odds ratio 22.24; 95% CI: 5.59-121.88, p<0.001)、さらにsepsis群と非敗血症群を区別し得た(odds ratio 24.3; 95% CI: 5.21-176.24, p<0.001)。[結語]新定義においてもプレセプシンは敗血症の早期診断に有用であり、臨床上診断に難渋するショックを認めない敗血症と非敗血症の区別にも有用である可能性がある。