[PD9-1] より適切な換気圧・量をどのように設定するか?
成人ARDSに対する研究は盛んに行われ、肺保護戦略によるVILI発生防止に焦点が当てられている。2000年のARMA研究では、6ml/kgの1回換気量が12ml/kgと比較して死亡率を低下させ、”low tidal strategy”という概念が定着した。また、プラトー圧は30cmH2O以下が推奨されてきたが、2015年にamatoらによりdriving pressure(ΔP)の重要性が強調されるようになった。一方、小児では質の高い研究は存在せず、成人のエビデンスを基に管理している現状である。しかし、小児でも成人と同じ換気量、圧を目指せば良いのだろうか。またARDS以外の病態では何を目指せばよいのか。ここでは、小児ARDS(PARDS)とnon-ARDSの病態に分けて人工呼吸管理を再考する。
PARDSの場合、成人と同様の肺保護戦略を用い、過剰な換気量、圧を制限することが重要であろう。過大な換気量を避けるように1回換気量5-8ml/kgが推奨されているが、エビデンスが確立された数字ではない。ARDSの機能的残気量(FRC)低下の程度は患者毎に様々であり、それを一律の換気量で論じるのは限界がある。患者毎のFRCに応じた換気量が理想であるが、そこで重要になるのがStrainとStressである。Strainは肺実質の歪みのことで1回換気量/FRCで表され、1.5-2を超えると肺傷害が進行することが知られている。また、Stress(経肺圧)は肺胞を伸展させる圧であり、「肺胞内圧-胸腔内圧」で求めることができる。つまり人工呼吸器におけるプラトー圧(肺胞内圧)が全て肺胞伸展に使われるわけではない。特に、幼少児の胸壁コンプライアンスは成人の3倍高いため、同じプラトー圧であれば経肺圧は小児の方が高い可能性がある。しかし、常に経肺圧を測定できる施設は限られているため、経肺圧が測定できない場合はプラトー圧を28cmH2O以下に制限することが推奨されているが、成人の推奨より低値であることは注目すべき点である。
non-ARDS肺についても、高用量の1回換気量は肺傷害の可能性が指摘されてきたが、成人ICU患者を対象とした報告では1回換気量やΔPの制限が転帰に影響しない可能性が示唆されている。FRCが保たれている肺であることを考慮すると小児でも同様の結果であろう。当然、過剰な換気量や圧による肺傷害を念頭に置く必要はあるが、non-ARDS肺に関しては、肺保護の観点よりも、人工呼吸器誘発性横隔膜機能不全(VIDD)を予防し早期抜管に繋げることが重要だと考える。自発呼吸を温存する管理がVIDD予防に有用であり、換気量、圧の設定は肺メカニクスを考慮しながら、過度な呼吸仕事量にならないように調整すべきである。
PARDSの場合、成人と同様の肺保護戦略を用い、過剰な換気量、圧を制限することが重要であろう。過大な換気量を避けるように1回換気量5-8ml/kgが推奨されているが、エビデンスが確立された数字ではない。ARDSの機能的残気量(FRC)低下の程度は患者毎に様々であり、それを一律の換気量で論じるのは限界がある。患者毎のFRCに応じた換気量が理想であるが、そこで重要になるのがStrainとStressである。Strainは肺実質の歪みのことで1回換気量/FRCで表され、1.5-2を超えると肺傷害が進行することが知られている。また、Stress(経肺圧)は肺胞を伸展させる圧であり、「肺胞内圧-胸腔内圧」で求めることができる。つまり人工呼吸器におけるプラトー圧(肺胞内圧)が全て肺胞伸展に使われるわけではない。特に、幼少児の胸壁コンプライアンスは成人の3倍高いため、同じプラトー圧であれば経肺圧は小児の方が高い可能性がある。しかし、常に経肺圧を測定できる施設は限られているため、経肺圧が測定できない場合はプラトー圧を28cmH2O以下に制限することが推奨されているが、成人の推奨より低値であることは注目すべき点である。
non-ARDS肺についても、高用量の1回換気量は肺傷害の可能性が指摘されてきたが、成人ICU患者を対象とした報告では1回換気量やΔPの制限が転帰に影響しない可能性が示唆されている。FRCが保たれている肺であることを考慮すると小児でも同様の結果であろう。当然、過剰な換気量や圧による肺傷害を念頭に置く必要はあるが、non-ARDS肺に関しては、肺保護の観点よりも、人工呼吸器誘発性横隔膜機能不全(VIDD)を予防し早期抜管に繋げることが重要だと考える。自発呼吸を温存する管理がVIDD予防に有用であり、換気量、圧の設定は肺メカニクスを考慮しながら、過度な呼吸仕事量にならないように調整すべきである。