第46回日本集中治療医学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD9] パネルディスカッション9
小児の人工呼吸管理の未来

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 3:30 PM 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:小泉 沢(宮城県立こども病院集中治療科), 中川 聡(国立研究開発法人国立成育医療研究センター集中治療科)

[PD9-3] 小児の呼吸器離脱評価の未来

伊東 幸恵, 竹内 宗之 (大阪母子医療センター 集中治療科)

呼吸管理において、呼吸器離脱は、少しとらえどころがなく、時にscienceではなくartであるといわれる。呼吸器離脱とは、どのような過程を経て行われるべきものなのであろうか。
呼吸不全患者に人工呼吸を開始するときには、まず、酸素化・換気、呼吸仕事などを適正化するように設定を調整する。その後、人工呼吸が必要になった原因を解決しながら、変化する患者の呼吸状態に応じて設定を微調整していく。この微調整は、実は、離脱過程の最初のステップであり、つまり離脱の準備とは治療の開始と同時に始まっている、ともとらえることができる。
成人では、自発呼吸テスト(spontaneous breathing trial, SBT)による呼吸器離脱評価の有用性が確立されており、小児においても、有用性は報告されている。しかし、SBT開始基準には十分な根拠はないし、課題も残されている。
例えば、SBTを行う時、SBT開始基準に至るまでの離脱過程は、医療者に依存するため、呼吸器設定の調整やSBT開始の時期にバラつきがでるおそれがある。SBTを行う以前の問題として、適切な離脱過程、ひいては適切な呼吸管理が必要なのである。
一方、それらをふまえても、SBT失敗による呼吸筋疲労や、それによる呼吸期間の延長などの課題は残る。特に小児では、SBTの前提である自発覚醒トライアルが困難であることも多く、覚醒度もムラがあるため、ある一点での評価よりも、呼吸管理中に持続的な評価を行うことで、呼吸機能の回復を見逃さず、時期を逸さずに呼吸器離脱を狙える可能性がある。つまり、小児における理想的な呼吸器離脱評価法とは、適正化された呼吸管理のもとで、客観的・経時的・連続的に評価できる方法と考える。
現在われわれは、血液ガス所見や理学所見から、呼吸仕事や呼吸筋疲労の主観的評価を指標にして、呼吸器設定を調整し、呼吸器離脱ができるかを評価している。呼吸仕事以外の部分は、人工呼吸器の自動ウィーニング機能が用いている指標でもあるが、例えば食道内圧・横隔膜活動電位を用いた呼吸仕事の評価を自動ウィーニング機能に組みこむことで、より理想的な呼吸管理が可能となるであろう。
また、Khemaniらは、最大の呼吸筋力が低下し、抜管後の呼吸仕事が大きい症例が抜管に失敗しやすいと報告しており、持続的な呼吸仕事評価に加えて、自動的な気道閉塞機能などによる横隔膜活動電位や最大吸気陰圧など、患者の最大呼吸能力の適切な評価法を組み合わせることで、より適切な離脱可能性の評価が可能になると考えられる。
人工呼吸開始直後から、呼吸器離脱の過程が開始されていることを意識し、呼吸仕事を持続的にモニター・評価しながら人工呼吸器設定をリアルタイムに調節し続けることで、人工呼吸期間を短縮し、かつ、より正確な離脱予測ができるかもしれない。