[SY10-3] 特定集中治療室からPICUの医療に期待するもの -小児科研修歴がない世代の小児重症患者対応-
演者は、救急科専門医であり、集中治療専門医であり、小児科の研修歴は皆無である。前任地ではこども救急センターに併設された救命救急センターで、小児科専門医を保有するスタッフと共に、小児救急患者診療を行った。主として外因性救急疾患症例及び、小児科からコンサルトを受けた、人工呼吸管理を要する重症内因性疾患症例の診療を実施した。ラピッドカークルーとして、小児症例に対応を求められるケースも少なくなく、外因性疾患では、小児救急症例に対して、救急外来から入院診療を含め、救急科医師が対応することが求められた。そのため、自身のような小児科研修経験がないスタッフが、小児症例に対応できるようにするため、教育体制や、マニュアルや小児カート整備、現場で活用する小児救急対応カードの作成、こども救急センタースタッフを中心に実施した。こども救急センタースタッフによるコア・レクチャーと、OJTにより、小児救急全般に対する知識の共有と、標準化が経時的に改善することを誌上発表した(石原、小児救急学会雑誌.2018)。 一方、現任地ではsemi closed type ICUに所属し、小児科専門医を有する成人ICUスタッフが、PICUと密な連携を取っている。PICU入院症例が、小児心奇形の開心術後や、重症小児内因性疾患、小児外科手術後症例などに限定され、いずれも高度に専門的管理を要する症例であるため、成人ICUスタッフの中でも小児科専門医を有する医師が診療に加わり、またPICUスタッフが成人ICU診療に荷担して、密な連携をはかっている。加えて、連日PICU入院患者の回診を成人ICUスタッフ加わり、ベッドコントロールや、リスク患児を認識するようにしている。また定期的なPICUカンファレンスや、Respiratory Support Team(RST)回診を通じて、PICU患児の情報を共有する機会を得ている。この結果、PICUベッドコントロールが難航した際に、成人ICUにover flowできる患児を選定したり、急変時のCPR対応に荷担したりできる体制が構築されている。 前任地ではER診療を中心とした、小児救急診療・小児救急医との連携が、現任地ではPICU診療の高い専門性を尊重しつつ、協力できる領域で連携する体制が構築されている。成人救急医・集中治療医にとって、いずれの形態も効率的に小児重症患者に接することが出来る機会であり、 今後集中治療専門医の育成において求められる一形態であると考えられる。