第46回日本集中治療医学会学術集会

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シンポジウム

[SY12] シンポジウム12
周術期における集中治療

Sat. Mar 2, 2019 4:05 PM - 5:35 PM 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:瀬尾 勝弘(小倉記念病院 救急部(麻酔科・集中治療部)), 森松 博史(岡山大学病院麻酔科蘇生科)

[SY12-3] 大腿骨頚部骨折での術後6か月死亡に関わる因子について:6年間の後方視的検討

小寺 厚志, 阿部 恭子, 相方 靖史 (熊本セントラル病院 麻酔科)

ライブ配信】

【背景】社会の高齢化に伴って,高齢者の大腿骨頚部骨折症例が増加している.大腿骨頚部骨折を受傷すると,長期臥床を強いられて日常活動性が制限されるため,重篤な合併症から死に至ることがある.【目的】大腿骨頚部骨折術後の転帰を調査して,術後死亡に関わるリスク因子を検討し,大腿骨頚部骨折術後の転帰を改善することを目的とする.【方法】本研究は,当施設の倫理委員会で承認を得ており,2012年1月1日から2017年12月31日に,全身麻酔あるいは脊髄くも膜下麻酔で管理された大腿骨頚部骨折の手術症例を対象とした.対象症例において,術後6か月以内の死亡を診療録で後ろ向きに調査して,死亡例群と生存例群の2群に分けた.この2群間で,年齢・性別・Body Mass Index・American Society of Anesthesiologist(ASA)分類・心臓弁膜症の有無・心駆出率・慢性閉塞性肺疾患の有無・認知症の有無・手術までの待機日数・手術術式・外科的アプガースコアについて比較検討を行った.外科的アプガースコアは,術中の出血量,最低平均血圧値,最低心拍数で構成されるスコアリングシステムであり,6点以下は高リスクと報告されている.なお,2群間の連続変量の有意差はMann-Whitney U testで検定し,2群間のカテゴリー変量の有意差はカイ二乗検定で検定し,p値が0.05未満を有意差ありとした.【結果】対象症例は506例で,術後6か月以内の死亡数は27例(5.3%)であった.死亡群では生存群と比較して,Body Mass Index値が低く(生存群20.5±3.2,死亡群19.3±3.7,p=0.02),ASA分類≧3の割合が多く(生存群48%,死亡群70.4%,p=0.02),II度以上の心臓弁膜症の罹患率が高く(生存群 16.7%,死亡群40.7%,p=0.00),認知症を有する割合が多く(生存群47.2%,生存群66.7%,p=0.04),外科的アプガースコア≦6の割合が多かった(生存群17.3%,死亡群48.1%,p=0.00). 年齢,性別,心駆出率,慢性閉塞性肺疾患の有無,手術までの待機日数,手術術式には有意差を認めなかった.【結論】大腿骨頚部骨折症例の術後6か月死亡には,Body Mass Indexの低値,ASA分類≧3,II度以上の心臓弁膜症罹患,認知症の合併,外科的アプガースコア≦6が関与する可能性が示唆された.術中の平均血圧の低値は,術後6か月死亡にまで影響する可能性が示唆され,安定した術中の循環管理が重要であると考えられた.