[SY15-1] Systematic reviewを解体してみる
医療におけるシステマティックレビュー(Systematic review:SR)とは簡潔に言うと、特定の診療課題に対して網羅的に透明性を持って情報検索を行い、その質等を評価した上でエビデンスとして診療に役立てる作業をいう。国際疫学学会(International Epidemiological Association)は「特定課題に対する関連研究をバイアスを考慮しながら、計画的に集め、批判的吟味をし、統合をする科学的エビデンスの検索方法」と定義している。同じく一般的に適応されている、包括的なレビュー方法としてスコーピングレビュー(Scoping Review)があるが、これはSRが適当でない場合などに、既存の文献を出来るだけ時間を掛けず、その内容に応じて分類するために使用される。またNarrative Reviewもしばしば用いられる方法であるが、これはレビューアーの主観が入る可能性があるなど、再現性や計画性を求められないものである。単にSRといっても、その中に定性的部分と定量的部分がある。定量的部分は一般的に「メタアナリシス」と呼ばれている。時にSRはメタアナリシスと同義語のように使われることもあるが、SRにはメタアナリシスを伴わないこともあり、メタアナリシスはSRの定量的部分とでも呼ぶのが妥当だと考える。定性的部分は各文献についてその介入内容やバイアス(の可能性)を記述評価することを言う。これがSRの根幹といっても良い。また「診療ガイドライン作成のためのSR」とそれ以外を目的とした「一般的なSR」の違いを明確にしておくことも必要である。通常、診療ガイドラインでは特定の診療課題に対する「推奨」を記述作成することを主な目的としている。つまり、確認評価したエビデンスを利用することで、その「推奨」をどれくらい強く確信して支持(あるいは否定)できるかが最終ゴールとなる。一方、「一般的なSR」は診療課題における特定の介入あるいは診断効果が如何に確実であるかを明らかにすることを目的としている。そのため抽出すべき項目や結論までの到達方法などに差が出てくる。以上のような分類方法を論じることでSRの「立ち位置」をより深く理解することを本講演の目的とする。