第46回日本集中治療医学会学術集会

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シンポジウム

[SY15] シンポジウム15
(CTG委員会企画) 皆でsystematic reviewをやろう!

Sun. Mar 3, 2019 8:45 AM - 10:45 AM 第3会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール1)

座長:志馬 伸朗(広島大学大学院医歯薬保健学研究科救急集中治療医学), 布宮 伸(自治医科大学医学部麻酔科学・集中治療医学講座集中治療医学部門)

[SY15-2] メタアナリシス

藤井 智子 (京都大学大学院 医学研究科)

介入の効果を評価するのに、ランダム化比較試験(RCT)から得られるエビデンスが必要であることは多くの人が同意するところだろう。集中治療領域は診療対象が生命の危機にある重症患者であり時間との戦いでもあるため、RCTを行うことは容易ではない。しかし、臨床研究の発展とともに世界各国の臨床試験への気運は高まり続けており、今や平均して4本/日以上の集中治療関連のRCTに関する文献がMEDLINE上に報告されている。
いくつもRCTが存在すると、アブストラクトしか読まれないこともあれば、複数のRCTの結果が相反することもある。個々人が全ての文献を熟読し、客観的に介入の効果を評価することは難しくなり、メタアナリシスが求められることになる。
ところがメタアナリシスも日々次々と出版されている。こうなると読者が混乱するだけでなく、不適切に結果が複製されたり、不完全な内容のものが出回ったりしやすい。もっとも、研究に費やされた資源は単なる浪費となってしまう。さらにはメタアナリシス間の結論が異なったりすることもあり、一体どこに結論を求めればよいのか、事態はさらに複雑になる。
そこで、まずメタアナリシスをしようと考えた場合には、既存のメタアナリシスを探し、評価するところから始めるのがよい。そしてもし既存のメタアナリシスがあるのであれば、そこに自分たちのメタアナリシスがどのような新しいことを加えることができるのか、先行研究と何が同じで何が異なるのかを明らかにすることである。
これを踏まえて、メタアナリシスをすることを考える。メタアナリシスは複数の臨床試験のデータを統合するものだが、データを集める前にまずはきちんとリサーチクエスチョンが定まっており、適切にシステマティックビューが行われていることが大前提となる。この過程では、適格基準の設定、研究の同定・選択・吟味が行われ、解析するのに適したデータが収集されているはずである。ここで収集されたデータを眺め、改めてメタアナリシスが適切かをチェックする必要がある。集められた研究で取り上げているクエスチョンが異なるものであれば、統合することは不適切だろうし、個々の研究がバイアスのある研究であれば、メタアナリシスの結果にもバイアスが生じてしまう(Garbage-in, garbage-out)。
さて、いよいよメタアナリシスの実施である。メタアナリシスは、介入の効果の方向・大きさを示し、研究間の効果の一貫性や得られた効果の確からしさを示すことがそのゴールである。メタアナリシスの原理は、個々の研究の介入効果を独立に推定すること、それぞれの研究の参加者はその研究の中においてのみ比較すること、より精確な研究に重みがおかれるように研究に重み付けをし、複数の介入効果の推定値を統合することである。
本シンポジウムでは上記の内容を踏まえて、固定効果モデルと混合効果モデル、異質性、結果の解釈の注意点などについてお届けする。