[SY15-3] ネットワークメタ解析とは?
複数のランダム化比較試験 (Randomized Control Trial: RCT) の結果を統計解析的手法で統合要約するメタアナリシスはエビデンスピラミッドの頂点であり,診療ガイドラインの推奨決定の材料などにも用いられている。しかし,通常のメタアナリシスは2群間での比較を行う手法であり,例えば,血糖管理において,110mg/dL以下,110-144mg/dL,144-180mg/dL以上,180mg/dL以上のどの血糖値帯が死亡率や低血糖の点において優れているかを比較することは,この4群間の中で直接比較されたRCTがない2群間もあり,通常のメタアナリシスでは比較することが難しい。ネットワークメタアナリシスは,A vs B,B vs Cの直接比較をしたRCTがあった場合,間接的にA vs Cの比較を可能にする。また,A,B,Cの治療法の順位付けも知ることができる。この手法によって,血糖管理では,110mg/dL以下と110-144mg/dLの目標血糖値帯が144-180mg/dL以上と180mg/dL以上の目標血糖値帯よりも低血糖の危険性が高いことが明らかになった (Intensive Care Med. 2017;43:16-28)。他にも最近,ストレス潰瘍の予防にプロトンポンプ阻害剤,H2受容体遮断薬,スクラルファートとプラセボのどれが優れているかについてのネットワークメタアナリシスも実施され,出血の予防の点ではプロトンポンプ阻害剤が優れている可能性が報告された(Intensive Care Med. 2018;44:1-11)。通常のメタアナリシスと異なり,間接比較をしているため解釈に注意は必要であるが,臨床における治療法の選択にヒントを与えてくれる可能性はある。本発表ではネットワークメタアナリシスの概要について紹介したい。