第46回日本集中治療医学会学術集会

Presentation information

シンポジウム

[SY16] シンポジウム16
(集中治療における薬剤師のあり方検討委員会企画) 集中治療領域で働く薬剤師の日本版ポジションペーパー -集中治療における薬剤師の活動-

Sun. Mar 3, 2019 10:50 AM - 11:50 AM 第3会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール1)

座長:入江 利行(一般財団法人 平成紫川会 小倉記念病院 薬剤部), 志馬 伸朗(広島大学大学院医歯薬保健学研究科救急集中治療医学)

[SY16-1] 集中治療室における薬剤師の行動指針

前田 幹広 (聖マリアンナ医科大学病院 薬剤部)

集中治療室(ICU : Intensive Care Unit)は、「内科系,外科系を問わず呼吸、循環、代謝等の重篤な急性機能不全の患者を収容し強力かつ集中的に治療や看護を行うことにより、その効果を期待する部門である」と定義され、院内、院外を問わず最重症患者が収容される部門である。そして、最重症患者が収容されるがゆえ、ICUにおける診療は多種多様な医療スタッフがそれぞれの専門性を最大限に発揮する集学的診療であることが求められる。
2016年度の診療報酬改定では、ICUにおける薬物療法の有効性および安全性に対する薬剤師のさらなる貢献が期待され、病棟薬剤業務実施加算2が新設された。これにより、各医療機関において薬剤師のICUへの配置は促進し、日本病院薬剤師会による2016年度「病院薬剤部門の現状調査」集計結果報告では、薬剤師のICU関連業務への関与の割合は専従15.7%、専任29.2%だが年々増加傾向であることが示されている。しかしながら、ICUにおける薬剤師の業務は、各医療機関の機能や運営体制、人員配置等により多彩であり、その内容も試行錯誤で決められているのが現状である。ICUの患者は、病態も複雑で合併症を併発することも少なくない。そのため、ICUの患者は数多くの薬剤を必要とし、薬物治療は複雑になる。したがって、ICUの薬剤師は、薬の専門家としての知識やスキルを活用することにより、薬剤師の観点から総合的に患者の薬物治療を評価し,計画の立案を行い、効果と副作用をモニタリングすることが求められる。
一方、米国では、1980年代よりICU・手術室・救急部門に薬剤師が関与するようになり、以後、薬剤師のICU医療チームへの貢献は多くの研究により証明されてきた。薬剤師の介入による副作用発現の減少や医療費の削減効果、さらにはICU入室患者の生命予後の延長なども報告されている。そして、2000年には米国集中治療医学会(Society of Critical Care Medicine;SCCM)と米国臨床薬学会(American College of Clinical Pharmacy;ACCP)が共同で「Position Paper on Critical Care Pharmacy Services」を発表した。この度、日本集中治療医学会では、集中治療における薬剤師あり方検討委員会を中心に、” 集中治療室における薬剤師の行動指針(仮)”をとりまとめた。本指針は、前述した米国のPosition Paperを参考に、日本のICU担当薬剤師が目標とする行動を示すものとして作成した。参考とすることで、ICUでの業務の標準化が進み、薬剤師がチーム医療の一員として重症患者の治療に貢献できることを目的としている。なお、本指針に記載されているのは活動の目標であり、業務上の必須事項とはしていない。
本演題では、行動指針を紹介しながら、今後のICUにおける薬剤師の役割を考えていきたい。