第46回日本集中治療医学会学術集会

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シンポジウム

[SY16] シンポジウム16
(集中治療における薬剤師のあり方検討委員会企画) 集中治療領域で働く薬剤師の日本版ポジションペーパー -集中治療における薬剤師の活動-

Sun. Mar 3, 2019 10:50 AM - 11:50 AM 第3会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール1)

座長:入江 利行(一般財団法人 平成紫川会 小倉記念病院 薬剤部), 志馬 伸朗(広島大学大学院医歯薬保健学研究科救急集中治療医学)

[SY16-3] 特定機能病院における薬剤師活動から考えるポジションペーパー

加藤 隆寛 (愛知医科大学病院 薬剤部)

我が国の集中治療へ従事する薬剤師は、病棟薬剤師の配置に伴い2007年ごろより大学病院を中心にICUへの配置を開始したところに端を発する。ハイリスク薬の管理の重要性からICUにおける薬学的管理に対して薬剤管理指導料2の算定が可能となったことで、急速に薬剤師のICU配置が促進した。また医療技術の高度化、医薬分業の進展に伴い、高い資質を持つ薬剤師を養成するため、2006年から薬学部は6年制へとシフトしている。米国の臨床薬学教育は、すでにPharmDの学位を有する薬剤師を輩出しており、臨床薬剤師が質の高い医療に寄与している。
集中治療の薬剤師については、米国では1980年代以前から集中治療薬剤師のフェローシップやレジデンシーは存在しており、その歴史は我が国に比べて圧倒的に長い。2000年には集中治療専門薬剤師の行動指針を記したポジションペーパーがACCPとSCCMから発行されている。ポジションペーパーの目的は、集中治療の薬剤師の行動レベルおよび特殊なスキルを定義することとされ、基本的活動、望ましい活動、理想的活動として定義されている。集中治療を行うにあたってのガイドラインは質の高いケアを実践するためには不可欠であるとされ、我が国においても学会主導の行動指針は今後必要になってくると考えられる。ポジションペーパーを作製するにあたっては、病院規模や地域性による患者の疾患や重症度などが異なることから、日本の環境にあったものが求められる。また知識の標準化や研修施設の策定などの準備も必要となってくると考えられる。
特定機能病院は、高度の医療の提供、高度の医療技術の開発及び高度の医療に関する研修を実施する能力等を備えた病院として、2017年の時点で85施設中、大学病院本院が78施設を占めている。大学病院の役割は教育・研究・診療であり、他の医療機関に比べて教育および研究の行いやすい環境が整っている。例えば、学生指導について、当院は薬学生の臨床実習を年間およそ80名受け入れ、年間8名の薬学生がICUでの実習を行う。また別に薬学生1名の長期実習(7ヶ月間)を受け入れ、卒業論文の指導を行なっている。看護師に対しては、大学院看護学研究科の学生に対して、診療看護師育成のための講義を行い看護師の育成にも携わっている。また、地域活動として、定期的に勉強会を開催し若手が相談できる環境作りを行なっている。
研究については、大学病院の薬剤部では研究に必要な資金や設備を揃えやすく、研究についても他の医療機関に比べて比較的取り組みやすい環境が整っていると考える。
共同のポジションペーパーであっても病院規模や地域での役割によって実際にできることや活動は変わってくると考えられる。本シンポジウムでは、当院での薬剤師の活動についてご紹介し、集中治療薬剤師としての役割について、広いビジョンをフロアの方々と共有したい。