第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY2] シンポジウム2
ICUにおけるサルコペニア対策 私たちの取り組み

2019年3月1日(金) 14:00 〜 15:30 第4会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール2)

座長:齊藤 正和(公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院), 西田 修(藤田医科大学医学部 麻酔・侵襲制御医学講座)

[SY2-3] ICU入室患者の上下肢電気刺激療法:2施設前向き無作為化比較試験

中西 信人1, 大藤 純1, 川下 陽一郎2, 板垣 大雅1, 中瀧 恵実子1, 西村 匡司2 (1.徳島大学病院 救急集中治療部, 2.徳島県立中央病院)

【目的】ICU入室患者に対する早期リハビリテーションの有効性は広く知られている。しかし、重症患者では早期リハビリテーションが困難なことも多い。電気刺激療法(Electrical muscle stimulation: EMS)は患者の随意努力を必要とせず、電気刺激により他動的に筋収縮を誘発する。我々はICU入室急性期から両側上下肢へのEMS使用が患者の筋肉量・身体機能や、離床レベルに与える影響を調査した。【方法】人工呼吸管理48時間以上およびICU滞在5日以上が予測される成人患者を対象にランダム化比較試験を行った。EMS群では低周波治療器(ソリウス:ミナト医科学)を用いて入室1日目から5日目に両側の上腕と大腿に電極を貼付して1日1回30分間EMSを使用した。対照群ではEMSは使用せず通常のリハビリテーションのみ行った。入室時より上腕、大腿の筋厚と筋断面積を超音波で評価した。主要評価項目は入室5日目の筋肉量を1日目と比較した変化率とした。副次評価項目は5日目の筋力(Medical research council: MRCスコア)、ICU-acquired weakness: ICU-AW発症率、退室時の離床レベル(Intensive care unit mobility scale: IMS)とした。【結果】対象患者は30人でEMS群12人、対象群16人だった。EMS群の1人が死亡、1人が不快感のため除外され、EMS群10人と対照群16人を比較した。両群間の年齢(EMS群 vs. 対照群: 73±4歳 vs. 69±3歳, p=0.47)、APACHE IIスコア(22(17-27) vs. 22(16-27), p=0.77)、人工呼吸期間(4(3-6)日 vs. 6(3-12)日, p=0.34)、ICU滞在期間(7(5-9)日 vs. 8(5-17)日, p=0.51)であった。EMS群と対照群で上肢筋厚は5日目の減少率が-3.0±2.9% vs. -12.7±2.3%, p=0.02、下肢筋厚が-1.3±4.1% vs. -15.6±3.2%, p=0.01とEMS群で有意に少なかった。上肢筋断面積:-5.7±3.6% vs. -10.5±2.9%, p=0.31、下肢筋断面積:-4.6±4.0% vs. -9.8±3.1%, p=0.31の変化率に差はなかった。入室5日目のMRCスコア55±3 vs. 51±3 , p=0.39、ICU-AW発症率0% vs. 29%, p=0.29、退室時のIMS 3(1-3) vs. 0(0-3), p=0.12に有意差はなかった。【結語】重症患者の急性期からの上下肢へのEMS使用は上下肢筋肉量の維持に有効であった。上下肢へのEMSが重症患者の長期予後を改善するか今後症例数を増やして検討していく必要がある。