第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY21] シンポジウム21
心拍再開後の神経集中治療:最新の研究成果

2019年3月3日(日) 08:45 〜 10:45 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:井上 明彦(兵庫県災害医療センター救急部), 木下 浩作(日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野)

[SY21-1] 客観的瞳孔反応による院外心停止後患者の早期神経学的予後予測

多村 知剛1, 並木 淳1,2, 鈴木 さゆり1, 菅原 洋子3, 関根 和彦3, 葉 季久雄4, 金谷 貴大5, 横堀 將司5, 横田 裕行5, 佐々木 淳一1 (1.慶應義塾大学 医学部 救急医学, 2.国家公務員共済組合連合会立川病院 救急科, 3.東京都済生会中央病院 救命救急センター, 4.平塚市民病院 救急科, 5.日本医科大学大学院 医学研究科 救急医学分野)

ライブ配信】

【背景】我々は院外心停止後患者の縮瞳率(PLR)を定量的瞳孔計を用いて自己心拍再開(ROSC)直後から72時間まで経時的に評価し、PLRによる90日脳機能良好(CPC1,2)の予測はROSC直後が最も優れ、そのカットオフ値は3%であることを報告した(Tamura et al, Resuscitation 2018)。近年心停止後患者の神経学的予後の予測には、複数の指標を組み合わせることが推奨されているが、客観的瞳孔反応指標を組み合わせた早期神経学的予後予測の有用性は明らかでない。【目的】臨床情報と定量的瞳孔計で計測可能な瞳孔反応の各パラメータについて、単独あるいは複数パラメータの組み合わせによる、院外心停止後患者の早期神経学的予後予測における有用性を検討すること。【対象と方法】多施設共同前向き観察試験。対象は2015年1月から2017年2月に搬入された18歳以上の院外心停止後患者50人(年齢64.1±16.9歳、男性36人、心原性心停止21人)。臨床情報として目撃、バイスタンダーCPR、初期波形VF/VT、体温管理療法の有無について、定量的瞳孔反応のパラメータとして安静時瞳孔径(BPD)、最小瞳孔径(MIN)、PLR、潜時(LAT)、平均収縮速度(CV)、最大収縮速度(MCV)、平均拡張速度(DV)、NPi値についてROSC直後(0), 6, 12, 24, 48, 72時間後に計測し、90日脳機能良好の予測能を検討した。【結果】90日脳機能良好13人。定量的瞳孔反応の各パラメータのうち、PLRとCV, MCV, DVの間に強い正の相関(ρ=0.97, 0.96, 0.96, P<0.001)、PLRとNPiに正の相関を認めた(ρ=0.65, P<0.001)。90日脳機能良好の予測にはROSC直後の0h-PLR [AUC=0.90 (95%CI 0.82 - 0.99)]、0h-CV [0.93 (0.85 - 1.00)]、0h-DV [0.89 (0.83 - 0.99)]が優れていた。一方、0h-NPi [0.65 (0.42-0.88)]の予測能はそれらより劣っていた。複数パラメータの組み合わせでは、予後予測能の向上は得られなかった。臨床情報は[0.85 (0.70 - 0.99)]で、最も優れた脳機能良好の予測は臨床情報と0h-PLRの組み合わせ [0.96 (0.90 - 1.00)]であった。【結論】心停止後患者の客観的瞳孔反応のパラメータを用いた機能転帰の早期予測には、単独ではROSC直後のPLR、CV、DVが優れていた。各パラメータの組み合わせで予後予測能は向上しなかったが、臨床情報とROSC直後のPLR値の組み合わせにより最も優れた早期神経学的予後予測が可能であることが示唆された。(科研費15H05009の補助を受けた)