第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY3] シンポジウム3
集中治療における薬剤有害事象とリスクマネージメント~薬剤の安全管理を考える

2019年3月1日(金) 09:15 〜 10:45 第18会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール1)

座長:添田 博(東京医科大学病院 薬剤部), 松田 直之(名古屋大学大学院医学系研究科救急・集中治療医学分野)

[SY3-5] 集中治療域における薬剤の適応外使用管理

安藝 敬生1, 若杉 和美1, 関野 元裕2 (1.長崎大学病院 薬剤部, 2.長崎大学病院 集中治療部)

ライブ配信】

医療安全に関する重大な事案の発生を契機に医療法施行規則の一部が改正され、「未承認薬等医薬品の使用」を含めた医薬品安全管理の強化が求められている。「未承認薬等医薬品の管理」としては具体的には未承認薬使用、適応外使用、禁忌使用に関する体制の整備が該当し、適応外使用とは承認された「用法・用量」、「効能・効果」と異なる使用を指す。特定機能病院に限らず、それ以外の病院もこれに準じた対応に努めることとされている。集中治療においては生命の危機迫る緊急的な状況において多様な合併症が存在するなかで特殊な環境が多く、適応内の医薬品使用では十分な薬物療法が行えず、やむを得ず適応外使用が行わる場面も存在する。該当する条文には「使用に関し、状況の把握のための体系的な仕組みの構築並びに当該仕組みにより把握した使用の必要性等の検討の状況の確認、必要な指導及びこれらの結果の共有」を医薬品安全管理責任者が行うよう求めているが、使用を禁じるのではなく、医師の裁量による現実的な使用に対して安全が確保できる仕組みを構築したうえで使用しなければならないと解釈できる。この医薬品安全管理の強化に対しては薬剤師に大きな役割が求められるが、刻一刻と変化する複雑な病態に対してスピーディーに薬物療法が行われるがゆえに、中央部門で調剤を行う薬剤師や医薬品情報管理を担当する薬剤師の関与は限定的となる可能性がある。よって、ベッドサイドで患者に関わる薬剤師が中心的な役割を果たすべく、これらの関係部署の薬剤師と連携を行うことが求められる。具体的には1,適応外使用に該当するか否か把握 2,薬学的知見に基づき、処方医師に対して必要性や論文等の根拠に基づくリスク検討の有無、処方の妥当性の確認 3,必要があれば処方医へ変更等の提案、その後の医薬品安全管理責任者への報告などが求められる。一方で、集中治療におけるベッドサイドにスポットをあてると、適応外使用を含む未承認薬等の医薬品のチェックを薬剤師のみで行うことは、マンパワーだけでなく医療安全上の点からも現実的では無い。適応外使用に対して医師と認識を共有し、医師の側からも医薬品安全管理専門委員会への申請を促す等、ベッドサイドでのチームとしての取り組みが必要である。今回は具体的な適応外使用例をもとに、当院のベッドサイドでの薬剤師の関わりから医薬品安全管理専門員会(医薬品医療機器等安全管理専門委員会)を中心とした施設内の適応外使用に対する手順について示し、集中治療においてあるべき安全管理体制について議論を深めたい。