第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY4] シンポジウム4
集中治療におけるFFP投与を再考する

2019年3月1日(金) 10:50 〜 12:20 第18会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール1)

座長:小倉 裕司(大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター), 土井 松幸(浜松医科大学医学部附属病院集中治療部)

[SY4-2] DICに対する新鮮凍結血漿(FFP)を考える

廣瀬 智也 (大阪警察病院 ER・救命救急科)

ライブ配信】

新鮮凍結血漿(Fresh frozen trauma; 以下FFP)は血漿交換療法を除き、本来は凝固因子の補充によって、止血を図る目的で輸血される。外傷または産科出血では、輸液と赤血球輸血のみの対応では希釈性凝固因子の低下を来たし、DIC(Disseminated Intravascular Coagulation)に伴う出血傾向を引き起こす。フィブリノゲン以外の凝固因子の止血に必要な最低濃度は正常の20-25%であるが、フィブリノゲンは40-50%(100mg/dl)である。大量出血ではフィブリノゲンが最初に枯渇し、150mg/dl前後でFFP投与を始めないと止血不全に陥る危険性が高まると言われており、早期からのFFP投与が必要となる。一方、敗血症性DICにおいては、日本版敗血症診療ガイドライン2016でも記載されているようにFFP投与は出血傾向がなく外科的処置も要しない場合、凝固異常を補正する目的ではFFP投与は行わないことを弱く推奨するとされている。重症敗血症患者における凝固異常の改善を目的としたFFP投与を行うかを検討したRCTは存在せず、そもそもPT、APTT値を改善させても凝固能が上がるわけではない。また観血処置時の出血予防に対するFFP投与の有効性を示したエビデンスはない。FFP投与の害として輸血関連急性肺障害(transfusion-related acute lung injury: TRALI)の発症(FFP投与による致死的TRALIの発生頻度:1:2-300000 products)などの危険性がある。現状では、出血傾向が出現した場合または外科的処置が必要な場合は、日本の血液製剤の使用指針(平成30年9月 厚生労働省医薬・生活衛生局:FFP投与のトリガーとなる検査値の参考値:<PT>(I)INR 2.0 以上、または(II)30%以下、<APTT>(I)各医療機関における基準の上限の 2 倍以上、または(II)25%以下、<フィブリノゲン値> 150mg/dL 以下、またはこれ以下に進展する危険性がある場合)に沿って症例ごとにFFP投与を考慮する必要がある。今後、積極的に敗血症性DICに対してFFPを投与することはないのであろうか?近年FFPが血管内皮傷害に効果があるのではないかという論文が散見される。ChangらはCLPによるラット敗血症モデルにおいて晶質液と比べて血漿による初期蘇生輸液は48時間生存率を改善させ、さらに肺機能の改善、炎症や内皮傷害のマーカーを減少させたと報告している(Shock 2018)。Straatらは非出血重症患者に対する観血処置前の予防的FFP投与を検討したRCTのサブ解析でFFP投与は血管内皮の保護につながることが考えられると報告している(Critical Care 2015)。出血性ショック患者を対象とした研究ではあるが、DengらはFFPの投与により出血後の血管透過性が改善し、その機序としてFFP中のアディポネクチンが寄与していると報告した(Shock 2016)。今回、敗血症性DICに対するFFP投与の有効性について現在ある様々な報告を整理し、議論したい。