第46回日本集中治療医学会学術集会

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ワークショップ

[WS1] ワークショップ1
集中治療室における感染管理の工夫

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 4:00 PM 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:土手 健太郎(愛媛大学医学部附属病院集中治療部), 松田 直之(名古屋大学大学院医学系研究科救急・集中治療医学分野)

[WS1-7] ICU入室時の敗血症および耐性菌スクリーニングによるDe-escalationを意識した感染対策

大野 博司 (洛和会音羽病院ICU/CCU)

ライブ配信】

 重症感染症である敗血症、敗血症性ショックの救命率向上において、適切な広域スペクトラムの抗菌薬を十分量、可能な限り早急に投与し、ひとたび起因菌・感受性がわかり次第「狭域スペクトラムの抗菌薬に変更する(de-escalation)」ことが重要なポイントである。つまり広域スペクトラム抗菌薬の使用期間を短期間に制限することで、治療している患者のみならず病院内、その地域での多剤耐性菌の誘発を避けることが可能となる。 初期治療において想定される起因菌をカバーしなければ死亡率が上昇することがわかっている。近年医療ケア関連のみならず市中感染症、さらには免疫不全状態患者の感染症での原因微生物の耐性化が進んでいる。そのため初期治療では広域スペクトラムの抗菌薬使用が必須となる。そしてDe-escalationを可能にするために抗菌薬投与前の培養採取(血液培養2セットおよび尿培養、推定感染臓器培養を含む)が必須であり、患者の全身状態の改善とこれらの培養結果をもとにDe-escalationを行っている。 また当院ICU/CCUでは敗血症・敗血症性ショックの入室が全体の20~30%を占め、さらにMRSA、緑膿菌をはじめとした耐性菌や結核、HIV、狂犬病、SFTS、播種性糞線虫など珍しい感染症も多数みられ、そして超高齢者、免疫不全患者(ステロイド、担癌状態、血液維持透析など)入室も多いことから、院内感染対策を重視せざるを得ない状況である。 そこで2017年より「ICU入室時感染対策シート」を作成し積極的に感染対策を行っている。これはICU入室が決まった時点で敗血症・敗血症性ショックかそれ以外の疾患か、耐性菌保菌の可能性を判断し、標準予防策+アルファの感染対策を入室当初から行う方法である。そして敗血症治療と同様に、入室後の病状経過および入室時点での培養結果に基づいて、“感染対策についてもDe-escalation”を行う点がポイントである。つまり感染症治療が奏功した場合や免疫状態の改善、耐性菌保菌陰性を確認でき次第、それまでの予防策を解除し標準予防策まで落とすという方法である。 シートの実際の使用法について紹介するとともに、敗血症・敗血症性ショックでの実際の対応および、原因微生物としてMRSA、緑膿菌などの耐性菌、発熱性好中球減少症、結核、SFTS、播種性糞線虫など具体的事例についてとくに培養判明前にどのように疑って対応するかについて現場の実践についてもとりあげる。