[WS1-6] 当院ICUにおけるIMP-1遺伝子保有耐性Acinetobacter baumannii多発事例への対応
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【背景】2017年4月にICU入室患者から多剤耐性Acinetobacter baumannii(MDRA)が検出され、対応を開始した。【臨床経過】2016年9月・11月に各1名から検出されたカルバペネム系・アミノグリコシド系2剤に耐性を示すA. baumannii (2DRA)が、2017年3月のICU入室患者2名から検出されていた。また2017年8月から10月にかけてICU入室歴のある4名の患者から2DRAが、1名の患者からMDRAが検出されたことから、2DRAも含めた集積像と考え対応を行った。積極的監視培養、環境検査、清掃消毒、口腔ケア・経管栄養物品の単回使用化などの対策を実施したが、2017年12月・2018年2月に各1名のICU入室患者から2DRAが、2018年4月に2名のICU入室患者からMDRAが検出され、2018年4月にICU入室制限下での次亜塩素酸Naによる清拭消毒を実施した。ICU入室歴のない1名のMDRA検出例を含めた15菌株を用いて実施したカルバペネマーゼ遺伝子およびPCR-based ORF Typing法解析結果からは、検出した株はすべてIMP-1遺伝子保有株であり、多くの菌株が共通遺伝子型(9株)または近縁遺伝子型(4株)と判明した。ICU入室制限下で行った環境検査において、IMP-1遺伝子保有A. baumanniiが複数のエアマットレスから検出され、耐性菌株のリザーバーと考え交換し、その後患者・環境ともに新たな検出菌株は確認されていない。2018年5月に国公立大学附属病院感染対策協議会の改善支援を仰ぎ、清潔不潔エリアのゾーニングのため注射準備スペースの中央化等の改修工事を実施した。また、手指衛生(入退室時手指衛生遵守率90%以上・1日1患者当たり手指消毒薬使用回数200回以上)・5S活動推進(ICTラウンドの指摘事項改善)・カルバペネム系抗菌薬適正使用(100患者・日当たりカルバペネム系薬使用密度およびDays of Therapy 10以下)に関するプロセス指標を設定の上、事例の終息に向け対策を継続中である。【結論】本事例はICUを中心としたIMP-1遺伝子保有A. baumanniiの多発事例と考えられた。IMP-1遺伝子保有A. baumannii多発事例はまれである。MDRAはICUでは伝播リスクが高く、標準・接触予防策遵守・5S活動推進・抗菌薬適正使用といった基本的対策の実施に加え、2DRAを含めたサーベイランスと、早期から院内でリスク共有を図り、入室制限やリザーバー探索、環境消毒を実施し、終息が困難な状況があれば迅速に外部支援を仰ぐ必要がある。(非会員研究者 有村尚子、折田美千代、児玉祐一、西順一郎)