第95回日本医療機器学会大会

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Oral presentation

感染防止

感染防止

[71] 輸液の微生物汚染

―ATPによる迅速判定―

松本 翔太1, 尾家 重治1, 幸田 恭治2, 鶴田 良介3 (1.山陽小野田市立山口東京理科大学薬学部薬学科, 2.山口大学医学部附属病院 薬剤部, 3.山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター)

【はじめに】
投与中の輸液が微生物汚染を受けると,敗血症性ショックなどの重篤な事態を招く.しかし,輸液の微生物汚染は目視では分らない場合が多いため見過ごされてしまうことが少なくない.そこで,演者らは輸液の微生物汚染の迅速判定法について検討してきたが,ATP(アデノシン三リン酸)+AMP(アデノシン一リン酸)値の測定により輸液の微生物汚染が迅速に判定できることが分ったので報告する.
【方法】
細菌・真菌の定量および同定は常法によりおこなった.また,ATP+AMP値(発光量;RLU)の測定は,ルシパック®A3Waterを用いておこなった.調査をおこなった4サンプルは,いずれも輸液の投与に起因すると推定された感染症症例である.
【結果】
事例1:投与中の高カロリー輸液の汚染が,インラインフィルタの着色により判明した.ルート内の輸液から2.4×105 生菌数/mL のCandida parapsilosisが検出され,2,745 RLUを示した.
事例2:投与中の末梢輸液の汚染例である.ルート内の輸液から9.6×106 生菌数/mLのSerratia marcescensが検出され,9,729 RLUを示した.
事例3:投与中の末梢栄養輸液の汚染例である.ルート内の輸液から1.0×108 生菌数/mLのSerratia marcescensが検出され,60,932 RLUを示した.
事例4:投与中の末梢栄養輸液の汚染がルート内のモヤモヤから判明した.ルート内の輸液から1.0×107 生菌数/mLのBacillus cereusが検出され,1,780 RLUを示した.
【考察】
ATP+AMPの測定は内視鏡,手術器械,厨房環境などの清浄度判定に利用されてきているが,輸液の微生物汚染の判定にも有用であることが判明した.輸液に起因する敗血症の頻度は決して少なくない.投与中の輸液の微生物汚染の迅速判定法としてATP+AMP値の測定が勧められる.