第96回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

滅菌1

滅菌1

座長:大川 博史(日本ステリ㈱)

[11] 手術器材滅菌コンテナ内への異物混入に関する要因と対策

古賀 康治1, 松田 貴恵子2, 藤本 陽子2, 生田 義浩2 (1.日本ステリ㈱, 2.熊本大学病院 中央材料部)

【背景】
滅菌コンテナ内に,茶褐色の異物混入事象が継続して2件発生した.2019年はワイヤーバスケットの編み目に,2020年は超音波手術器CUSAエクセルプラス®(インテグラ社)のハンドピースに付着していた.いずれも組立点検時には発見できず,滅菌後の術前器材展開時に発見された.異物の成分分析は,いずれも生体成分のタンパク質ではなく,セルロースやラフィノースなどの糖類のみが検出された.手術部および医薬品情報室の協力で,術中に使用する類似糖分物質を調査したところ,生体組織接着剤ボルヒール®と可吸収性止血剤サージセル®が該当した.混入した異物を特定し,発生要因と再発防止を目的とした検討の結果を報告する.
【方法】
1.ボルヒール®をステンレストレイに塗布し以下の3種類の条件で洗浄をおこなった.(1)ウォッシャーディスインフェクター(以下WD)のみ(2)ブラッシング予備洗浄後にWD(3)浸漬洗浄20分の予備洗浄後にWD洗浄後にトレイを滅菌コンテナに入れ,高圧蒸気滅菌をおこなった.2.ボルヒール®とサージセル®混合物を塗布し,同様の条件で洗浄,滅菌をおこなった.
【結果】
1.ボルヒール®のみの場合は,いずれも異物は発生しなかった.2.ボルヒール®とサージセル®混合物の場合は,WDのみの洗浄,滅菌後に,茶褐色の異物が発生した.これは,事象の異物と肉眼的に類似しており,分析では糖成分であった.
【考察】
今回の事象と検証で得られた異物は,洗浄後の目視点検では確認できなかった.このことから,ボルヒール®とサージセル®を同時に使用する場合,透明で器材に固着しやすいと考えられた.固着物の除去はWDのみでは困難であることが示された.特に,上記の医薬品を同時に使用する症例の器材は,予備洗浄の必要性があると考えられた.今回の防止対策として,同時に使用する術式を抽出して,血液や組織片付着がなくてもワイヤーバスケットごと浸漬する予備洗浄を追加することで対応している.