第96回日本医療機器学会大会

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Oral presentation

トレーサビリティ

トレーサビリティ

座長:美代 賢吾(国立国際医療研究センター)

[26] 鋼製器具の製造販売業者へのダイレクト修理提出の実施報告

津嘉山 身衣子, 久保田 英雄, 橋本 素乃 (東京医科歯科大学病院 材料部)

【背景・目的】
鋼製器具の多くは販売業者を通じて点検や修理に出しており,修理先の選定や発注に関しては指定せずに販売業者任せとなっていた.トレーサビリティシステムから修理履歴データを確認すると修理から戻ったばかりの鋼製器具で再度修理が必要となった事例があり,製造販売業者に問い合わせたところ修理していないとの返答を受けた.また,一部鋼製器具を製造販売業者に修理依頼したところ「他社による修理歴があり,修理可能基準を逸脱している」ことから修理不能となるケースが散見された.販売業者は特に修理期間が院内へ与える影響を考慮し,早期返却が可能な業者へ依頼しているとのことで,研磨等の軽微な修理に関しては修理品質が考慮されていなかった.そこで,製造販売業者へ修理を直接依頼送付し,修理期間や修理品質にどのような影響を及ぼすか検討した.
【方法】
鋼製器具のうち,製造販売業者の刻印や表示からA社と判別可能なものを対象に,2018年9月から2020年9月までA社に直接宅急便により送付し点検および修理を依頼した.点検・修理の結果と返却の連絡は製造販売業者担当者と材料部担当者がメールを介しておこなった.
【結果】
剪刀に限定すると販売業者を介して点検・修理した場合の平均修理日数24.2日,再修理割合44%であった.対して製造販売業者に直送した場合は平均修理日数13.6日,再修理割合8%であった.
【考察とまとめ】
これまで製造販売業者の点検・修理は作業日数が長いとされてきたが実際の修理日数は短く,再修理の割合は低かった.このことから修理後の品質は製造販売業者の方が高いと考えられた.鋼製器具の質を担保し信頼性の高い鋼製器具の再処理をするためには点検・修理は製造販売業者に依頼するべきであることが示唆された.今後は各販売業者の修理先の選定方法を調査し,病院の方針を伝えて製造販売業者へ点検・修理を依頼する必要がある.