第96回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

テレメータ

テレメータ

座長:新 秀直(東京大学)

[41] 特定小電力トランシーバを用いた医用テレメータの点検法に関する基礎検討

川邉 学1, 本塚 旭1, 加納 隆2 (1.埼玉医科大学保健医療学部臨床工学科, 2.滋慶医療科学大学大学院)

【目的】
医用テレメータは生体情報をモニタする電波を利用した医療機器である.通常,医用テレメータの受信点検は医用テレメータ送信機(以下送信機)が使用されるが,携帯型の送信機では電極リードがアンテナの役割を果しているためリードの形状が電波放射パターンに影響を及ぼし,再現性のある受信強度測定が困難となる.そこで無指向性アンテナを持つ400MHz帯特定小電力トランシーバ(以下トランシーバ)を用いた医用テレメータの点検方法について検討した.
【方法】
発信状態のトランシーバIC-4300(アイコム社)およびA型送信機LX-5120(フクダ電子社)を同じ紙製の台に乗せ,アンテナシステムが敷設されたエリア内を移動しながら,アンテナで受信される受信電圧をスペクトラムアナライザSpeCat2(NEC社製)を用い計測し,双方の値を比較した.トランシーバの送信出力は空中線電力1mWに設定し,送信機は電波放射パターンを安定させるために樹脂製の棒状治具にとりつけた状態とした.さらに,アンテナが敷設されたエリア内の任意の8ポイントにトランシーバを順に移動させ,それを10回繰り返しおこない計測される受信電圧のばらつきを四分位偏差(IQR, Inter Quartile Range)で評価した.
【結果・考察】
トランシーバと送信機の受信電圧の関係では,トランシーバは送信機より電圧比が10dB程度高く,相関係数は0.8以上と高い相関が得られた.また,任意の8ポイントにおけるトランシーバのIQRは最大で1.75dBμVであった.したがって,トランシーバで得られる受信電圧を補正することでおおよその送信機での値を得ることができるだけでなく,より再現性の高い計測が可能であると考えられた.
【結語】
医用テレメータの点検時に送信機の代わりに,安定した放射特性を持つトランシーバを用いる本法は定期点検毎の時間的な変化を追うことができるので,遮蔽物やアンテナシステム由来の不具合を発見しやすい.