第96回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

洗浄評価

洗浄評価

座長:柴田 義浩(国立病院機構熊本再春医療センター)

[67] ATP抽出法による管状器械の洗浄評価の試み

石本 洋子, 小林 久美子, 望月 めぐみ, 竹内 好美, 渡辺 眞貴, 小久保 安朗 (福井大学医学部附属病院 滅菌管理部)

【はじめに】
洗浄評価判定ガイドラインでは,洗浄後の一般的な鋼製小物に対する残留蛋白質量の基準が設けられているが,「内腔を有する器械は該当しない」とされている.当院の管状器械の洗浄は,予備洗浄の後に内腔も洗浄できる器具を用いてWD洗浄器などで実施しているが,洗浄後の目視確認には限界もあり,「本当に内腔はきれいになっているのだろうか?」という疑問を抱いていた.そこで今回,現行の洗浄方法が適切か,内腔に汚染が残留していないかを評価するために,実使用した吸引嘴管とATP抽出法を用いて調査した.
【目的】
現行の吸引嘴管の洗浄方法が適切かどうかをATP抽出法により評価する.
【方法】
期間:2020年8月~12月 対象:手術後の器械セット内の外科用吸引嘴管,耳鼻咽喉科用吸引嘴管,脳外科用吸引嘴管 方法:「3MTHクリーントレースTHモニタリングシステム」を使用し,使用手順に則って測定する.(事前に,期限切れで保管されていた専用のキットで,抽出方法の手順や技術的な確認・訓練をおこなった)
【結果・考察】
前日に使用した器械は,予備洗浄として酵素洗剤に15分以上浸漬し内腔をブラッシング,その後WDや管状器具洗浄器,減圧沸騰式洗浄器で洗浄されていた.使用直後の器械は,ブラッシング後に器械洗浄をおこなっていた.
総数172本,最大値17,757RLU,最小値4RLU,平均493.6RLUであった.
全ての吸引嘴管が,洗浄評価判定ガイドラインの残留蛋白質量の基準値200マイクログラム≒30,000RLU以下をクリアできており,現行の洗浄方法は適切と考える.
しかし,開頭セット内に入っている1本だけが突出して最大値を示していた.この吸引嘴管は他に比べて極端に内腔が狭い器械ではないが,手術部位により術者が適宜形状を変形させて使用しており,変形を修復しにくくブラッシングが難しい器械でもある.このため洗浄評価をこまめにおこなうことや,変形や劣化の有無も含めて注意して取り扱う必要がある.