第96回日本医療機器学会大会

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ポスター演題

ポスター演題

[P3] NPPV療法における医療機器関連圧迫創傷防止のためのシミュレーション分析

古平 聡, 福島 雛子, 塚尾 浩, 海老根 智代 (北里大学医療衛生学部臨床工学専攻)

【背景】
非侵襲的陽圧換気(以下NPPV)は,急性心不全や慢性閉塞性肺疾患などに合併した呼吸不全における治療法として広く用いられている.一方,NPPV療法による医療関連機器圧迫創傷(以下MDRPU)が数多く報告されている.
【目的】
今回,NPPVマスク使用時のMDRPU好発部位である頸部ストラップ下における剪断力や圧力と各種換気条件との関係について検討をおこなった.
【方法】
気管チューブを経由しテスト肺を接続した人型模型にNPPVマスクを装着した.人工呼吸器の換気モードはA/C,換気回数は15回/分,
I:E比を1:3に設定した.ストラップ長や1回換気量,PEEP等を変化させたときの頸部ストラップ下にかかる剪断力や圧力を計測し,これらとの関連性について調べた.
【結果】
ストラップ下の剪断力は3.0±1.5(N),圧力は12.4±3.8(mmHg)であった.重回帰分析では,ストラップ長や最大フロー,PIP,初期剪断力とストラップ下の剪断力との間に関連が見られた.また,褥瘡リスクが高まるといわれている剪断力4N以上となるカットオフ値は,本モデルでは長さ14.5(cm)以上(AUC0.77, P<0.01) ,初期剪断力2.1(N)以上(AUC0.96,P<0.01)であった.
【考察・結語】
MDRPUは医療機器・材料など自重以外の重み(圧力)が組織下にかかることのみならず,剪断力により真皮や毛細血管網などの変形から血管経が縮小し,虚血を生じることによって発生するといわれている.結果より,マスク取り付け時の頸部にかかる剪断力や圧力,換気中の送気流量や気道内圧が大きいほど換気中にストラップが引き延ばされ,頸部にかかる剪断力を大きくしていることが示唆された.NPPV導入患者は浮腫などにより組織が脆弱なことに加え,呼吸苦や圧迫感が強く,装着に苦慮することも多い.臨床での測定は困難であり,模型によるシミュレーション分析は適正な使用条件を見つけ出すための有用な方法のひとつになりうるのではないかと思われる.