第96回日本医療機器学会大会

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Symposium

シンポジウム1 貸し出し器械の履歴管理の工夫と具体的対策

座長:小久保 安朗(福井大学),根本 裕司(ミズホ株式会社)

[シンポジウム1] 業者貸出し手術器械の履歴管理

―中材業務における諜報活動(インテリジェンス)―

菅田 潤 (北九州市立八幡病院 中央材料室)

当施設では,「LI手術に際しては,当該医療施設において使用前に洗浄および滅菌をおこなう」,「LI使用後は,適切な洗浄消毒をおこなって汚染を除去しなければならない」としたガイドラインに従い手術使用前準備および手術使用後処理を実施している.その際,洗浄工程では洗浄インジケータ等でその妥当性の確認を,また滅菌工程ではその工程の監視をおこなう.これにより一定の基準に合格したLIのみが,手術に供給されるかまたは施設外部へ搬出される.
前掲のガイドラインでは,「納品するLIには,分かりやすい取扱説明書および分解/洗浄/滅菌手順書(マニュアル)を添付する」 とあり,また,ISO 17664においても「6 医療機器製造業者が提供すべき情報」,特に6.6.1.1では「(略)プロセス(中略)を少なくとも1つは規定しなければならない.その場合,使用者にこの問題への注意を喚起する説明を準備しなければならない.」 とあるが,現状ではマニュアルと共に持ち込まれるLIは限られている.
ここで,当施設に持ち込まれたLI(M社製)の事例を報告する.添付文書等を参照したところ洗浄方法についての指示が未記載であった.そこで,M社の本社へ再処理手順書を請求した.以前に本社を見学した際に「当社の再使用可能な製品には再処理手順書を用意している」と担当者から説明を受けていたからであった.その結果手順書を入手することができた.
話が変わるが,諜報活動には「ヒューミント(Human Intelligence),協力者から情報を得る」や「オシント(Open Source Intelligence),公開情報諜報」などがある.諜報活動というと医療と無縁に思えるが例えばこれらを,見学の際に担当者から説明を受けたのは前者,再処理手順書を入手したのは後者に当てはめることができるのではないかと考える.今回の事例は情報がないからと諦めず,日々の業務やその他の活動で情報を得ることが可能であることを示すものではないだろうか.