第97回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

手術室

手術室

2022年6月3日(金) 09:00 〜 09:50 第4会場 (アネックスホール F204)

座長:谷口 雄司(鳥取大学)

09:40 〜 09:50

[27] 荷重計測を用いた鋼製小物の使用感の可視化

山内 康司1, 川植 駿1, 久米 健太1, 鏡 周也1, 横溝 聡1, 田中 一嘉2, 金井 しのぶ3 (1.東洋大学理工学部生体医工学科, 2.㈱田中医科器械製作所, 3.㈱マイステック)

主に手術室で用いられる鋼製小物は大きく
分類しても約30種類にも上り,さらにサイズや
先端形状のバリエーションは数百種類に上る.
この理由が手術手技自体の多様性にあるのは言
うまでもなく,典型的な多品種少量生産であり,
他製造業と比較して自動化は進まず,熟練技術
者による手作業での製造が残っている.しかし
ながら団塊世代の大量退職や若者のものづくり
離れなどの理由で,後継者は年々減少しており,
技能技術伝承が急務である.
このような背景から我々は,熟練技術者の暗
黙知を形式知に変換し,高品質な鋼製小物のも
のづくりを支援すべく,製品特性の可視化に取
り組んでいる.切除・把持等の基本性能は当然
具備するが,それに加えて「なめらかさ」「デ
リケート」といった医師の使用感が鋼製小物の
付加価値であると考えた.これら感性評価は鋼
製小物の操作力変化に関連すると仮定し,鋼製
小物に荷重をかけて開閉動作をおこなう際の荷
重-変位曲線を求めることとした.
計測スタンド(IMADA製MX2-1000N)に機器
を固定し,フォースゲージ(ZTA-500N/50N)
で一定速度にて鋼製小物の把持部に垂直に荷重
をかけ,開状態から完全に閉状態になるまでの
荷重-変位曲線を求めた.評価の対象は剥離鉗
子,開創器,鋭匙鉗子,円のみ鉗子等である.
このうち剥離鉗子と開創器はラチェット(ガン
ギ)を有する.計測スタンドへの固定のため,
把持部の形状に対応したABS製アタッチメン
トを個別に設計し,3Dプリンタで作成した.
ほぼ同一仕様の2社の製品同士を比較した
ところ,ラチェットを有する鋼製小物について
は各ラチェットを乗り越える際の荷重変動波形
に明確な差が観察された.また,ラチェットを
有さない鋼製小物では,閉じる時と開く時の荷
重のヒステリシスについて大きな差が観察され
た.前者はラチェットにより組織の把持力を繊
細に調整する際の使用感に,後者は開閉操作を
繰り返す際の使用感に関連付けられると考えら
れる.