第97回日本医療機器学会大会

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Oral presentation

技術開発/改良

技術開発/改良

Fri. Jun 3, 2022 2:00 PM - 3:00 PM 第4会場 (アネックスホール F204)

座長:吉田 靖(滋慶医療科学大学)

2:00 PM - 2:10 PM

[33] 抗血栓性に優れる新規アクリルポリマーの合成

谷口 将太1, 中村 賢一1, 田中 賢2 (1.東亞合成㈱, 2.九大先導研)

【緒言】
人工心肺・ECMOやステントなどの血液と
接触する医療機器には,血液の異物反応による
血栓の形成を防ぐために,生体適合性に優れる
抗血栓性コーティング剤が使用される.
従来から,コーティング剤には,動物由来の
ヘパリンが使用されているが,水溶性のため基
材への固定化が必須となることや,感染症や供
給面でリスクが高いことなどの課題があり,非
水溶性の合成高分子が注目されている.特に,
ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)
は,抗血栓性を有しており,また簡便なコート
が可能な非水溶性であるため,実用化されてい
る.
しかし,PMEAは長時間使用で血栓が生じ
るなどの課題があり,さらに優れた抗血栓性合
成高分子の開発が望まれている.
【開発方針と実験】
血栓は,ポリマーコートされた表面上に,
血中の血小板やタンパク質が吸着することによ
り形成される.これらの吸着の防止には,ポリ
マーと相互作用する水和水が寄与する.水和水
は,ポリマーとの相互作用の強さによって不凍
水,中間水,自由水に分類されるが,ポリマー
と適度に相互作用している中間水の量が多い場
合に,吸着が抑制される.そこで,中間水を多
く有するポリマー構造を探索した.
ポリマーは,ラジカル重合により合成,再
沈殿精製することで得た(重量平均分子量で
85,000程度).中間水量は,含水したポリマー
の示差走査熱量測定のピーク面積から算出し
た.抗血栓性は,ポリマーコートしたポリエチ
レンテレフタレートフィルム上に血液を静置さ
せ,走査電子顕微鏡により表面上に吸着した血
小板を数えることで評価した.
【結果・考察】
側鎖にウレタン基と特定のエーテル構造
を有する非水溶性アクリレートポリマーは,
PMEAと比べて中間水を多く含み,抗血栓性
が向上した.これは,水素結合点の増加により,
適度な水和構造が形成されたためと推定される.