第97回日本医療機器学会大会

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Symposium

シンポジウム10 手術映像記録システムの現状と未来

Sat. Jun 4, 2022 3:10 PM - 4:40 PM 第2会場 (アネックスホール F203)

座長:長瀬 清(岐阜大学),釈永 清志(富山大学)

3:55 PM - 4:10 PM

[シンポジウム10] 手術手技学習と情報共有の観点から見た婦人科腹腔鏡手術

-画像記録システムの果たす役割-

浅田 弘法 (新百合ヶ丘総合病院 産婦人科/低侵襲婦人科手術センター)

腹腔鏡手術は、切開創の小ささ、侵襲部位の少なさから、その低侵襲性が優れた点とされている。その反面、手技が従来の手術と異なり、技術習得は困難であると指摘されてきた。この状況は、広く内視鏡手術が普及している現在でも同様であろうか。
 手術を行うには、運動制御と状況判断といった2つのカテゴリーの技術や能力が必要である。腹腔鏡手術における運動制御の技術は、スポーツ技術習得と同様なメカニズムで習得が可能である。腹腔鏡の黎明期では、開腹手術や一般的な手の動きと異なっている、腹腔鏡に特徴的な作業環境が注目され、技術習得の困難さが強調されていた。しかし、現在はトレーニング方法も確立され、腹腔鏡の操作技術は若手医師にも習得可能となった。
 手術の質の向上には運動制御の技能も重要であるが、認知・判断といった、状況判断の質が重要となる場面が多い。術中に遭遇する場面では、解剖学的な知識や、どこを剥離するか、どのようなデバイスを使用するかなどの判断が要求され、術者としての経験が問われるところである。手術における状況判断能力の習得には、これまでは、多数の症例数の経験と解剖の知識が必要とされていた。しかし、画像機器の向上と、手術データーの共有化で、手術中の判断能力や解剖学的知識も、執刀経験が少なくても学習可能な環境が構築できる時代になってきた。
 我々の施設で使用している画像システム(SRS)では、電子カルテ上で、すべての手術を参照することができる。指導医は自分の手術手技を振り返ることが可能であり、また、修練医は指導医の手術を繰り返し見ることで、手術中の判断を指導医と共有するようになる。記録された画像を共有することで、手術手技のみならず、術中の認知・判断といった、従来は多数症例を経験して初めて身につく技術も学ぶことが可能となってきた。
 画像システムが普及した現在では、腹腔鏡手術は手術手技の習得が困難な手技ではなく、逆に、初学者が学習しやすく、解剖学的な判断も含めた、手術技術を学びやすい手術となってきたと考えている。外科手術の記録システムの開発と改善は、手術情報の管理という観点のみならず、技術習得や教育という観点からも評価されるべきであり、今後、よりよい画像管理システムの開発と普及が望まれる。