第98回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

技術開発/改良

技術開発/改良

2023年6月30日(金) 09:00 〜 10:10 第4会場 (アネックスホール F204)

座長:吉田 靖(滋慶医療科学大学)

09:20 〜 09:30

[32] 医療機器衝撃検知システムの上市に向けた実用性の検討

吉澤 光崇1, 伴在 高志1, 西尾 俊哉2, 表 則夫2 (1.社会医療法人抱生会丸の内病院 臨床工学課, 2.㈱サンテクノ)

【背景】
中央管理機器は衝撃を受ける機会が多い.衝撃を受けた医療機器が適切な点検をされずにそのまま臨床で使用された結果,不具合を起こした事例がある.簡便に医療機器の衝撃ログを確認できる必要性を感じており,我々は衝撃検知システムの開発をおこなってきた.
【目的】
本システムを実際に中央管理業務に組み込み,衝撃値データを取得・定量分析することによって,実用性の検討および上市のための最終調整をおこなう.
【方法】
システムは,衝撃検知センサ,アプリ,受信デバイスから構成される.当院で中央管理する T社製輸液ポンプ・シリンジポンプ全80台に対し,衝撃検知センサを貼付した.機器の返却時に,衝撃検知センサから受信デバイスを通して衝撃値データを取得した(短距離無線).使用中の衝撃値の最大値を検討対象とした.100G以上を『強い衝撃』を受けたものとした(高さ 20cmからの垂直落下を目安).統計分析はウィルコクソンの順位和検定を用いた.2022年3月
1日から12月31日までを調査期間とした.
【結果】
期間中,衝撃値を取得した輸液ポンプは延べ857台(Y群),シリンジポンプは延べ369台(S群).Y群3件,S群5件の強い衝撃を検出した.衝撃値の中央値はY群が10.38G(IQR: 7.44-14.65),S群26.55G(IQR:15.63-40.72)であった.箱ひげ図におけるひげの上端はそれぞれ25.38G,76.83G であった.2群間には有意差を認めた(p<0.05).
【考察】
強い衝撃を受けた8台は精密な点検を施した.これらは外装目視のみでは衝撃を受けたものと確認できず,衝撃を可視化することは有用といえた.また,上市製品においては,衝撃を受けた時刻を記録する機能を付け加えることにした.
【結語】
本システムは使用中に受ける衝撃を定量的に可視化でき,医療機器管理者の適切な対応を可能にする.
本研究は,2021年度日本医療機器学会研究・開発助成を受けたものである.