第98回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

技術開発/改良

技術開発/改良

2023年6月30日(金) 09:00 〜 10:10 第4会場 (アネックスホール F204)

座長:吉田 靖(滋慶医療科学大学)

09:30 〜 09:40

[33] エアー搬送と画像処理を利用した前向き点眼の自動化についての検討

中野 康汰1, 山路 倍弘1, 道下 史也1, 安永 弘樹1, 内田 裕久1, 内田 恵子2, 中澤 徹2 (1.豊橋技術科学大学大学院工学研究科電気・電子情報工学系, 2.東北大学医学部眼科学教室)

けがや病気,加齢などの理由によって自分で点眼をするのが難しいことがあり,点眼補助器具が開発されている.しかし首を上に曲げる必要があるため,全ての人が使えるというわけではない.そこで本研究では,人が起立位または座位にあって前向きの状態でも自動的に点眼をする装置の開発が可能であるか検討をした.この装置では点眼薬の汚染を避けるために薬液を容器から直接を出し,風によって液滴に横方向の力を加えることで,前を向いた姿勢でも点眼ができるものである.CCDカメラにより顔の画像を測定し,二値化とエッジ検出,最小外接円検出法よって眼の中心位置を求めた.容器をリニアアクチュエータによって押すことで液滴を落下させ,風により横方向の力を加えて軌道を変える.水を入れた点眼薬容器(パタノール点眼液0.1%)から取り出せる液滴の重さを測定(試行回数50)したところ,平均値が44mg,標準偏差1σが2.7mgであった.容器出口から眼までの水平距離が40mmにおいて,軌道計算をしたところ,分布±3σ(約99.7%)に収まるときの縦方向のブレ幅は 4.3mmになった.高い点眼確率を得るには,瞼はこの幅以上に開いている必要がある.薬液が眼に入る確率を,指による瞼の押さえの有りと無し,そして抑え方の違いを調べた.瞼を押さえないとき(瞼の開幅6~9mm)に液滴が眼に入る確率は77%であり,上下の瞼を押さえたとき(開幅17mm)は99%,上瞼だけ押さえたとき(開幅14mm)は90%,下瞼を押さえたとき(開幅7mm)は0%になった(各試行回数 100).当然ではあるが,点眼確率は瞼の開幅に大きく影響を受ける,重さの分布と開幅との関係を求めることができた.液滴が眼に入る確率は液滴の重さのばらつきで生じる縦方向の分布幅が小さくなるほど高くなるため,点眼薬容器から眼までの水平距離などの装置の構造を検討することで,さらに改善が可能であることが明らかになった.