第98回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

電磁環境・電波管理

電磁環境・電波管理

2023年7月1日(土) 09:50 〜 10:30 第2会場 (アネックスホール F203)

座長:吉岡 淳(仙台赤十字病院)

10:20 〜 10:30

[63] 垂直降下アンテナの追加による医用テレメータの新たな通信不良対策

神山 英昇1, 松本 剛直1, 太田 稔1, 佐々木 俊介2 (1.北海道大学病院 ME 機器管理センター, 2.㈱ムトウテクノス)

【背景・目的】
省電力医用テレメータによる生体情報モニタリングはバイタルサインの監視として重要であるが,通信不良による断続的なモニタリングの中断事例も多数報告されている.多くの医療施設において通信不良が発生した場所にアンテナの増設を試みているが,病室と廊下の隔壁や天井などの構造物が制約となり理想的な位置にアンテナを増設することは困難である.そこで我々は,施設の設備改修工事を必要とせず良好な通信環境を実現するため,天井裏を水平方向に走行する開放同軸アンテナケーブル(以下アンテナ)に対して,廊下壁面に垂直に降下するアンテナを追加する新たな設置方式を開発した.今回,垂直降下アンテナ追加による電波通信環境の改善状況について評価した.
【方法】
垂直降下アンテナの設置位置を検討するため病室内にテスト送信機を設置し,スペクトラムアナライザを用いて廊下の各所で電界強度を計測した.その結果をもとに病棟の廊下壁に垂直降下アンテナを設置し,設置前後の各5例の 24時間における6秒以上継続する通信不良波形の発生件数を集計した.
【結果】
垂直降下アンテナの設置位置は各病室の入口中央から水平方向150±50cmの範囲において,金属製の戸および戸袋の対面に位置する壁面を避けることが適正であると判断した.垂直降下アンテナの追加により通信不良は14件から8件に43%低下した.
【考察】
電波法では省電力医用テレメータは10 mW以下の弱い電波強度で使用することが定められている.病棟内の行動範囲において安定した受信環境を整えるにはアンテナを全病室と廊下に張り巡らせる必要がある.本手法は施設の大規模な改修工事を必要とせず多方向の電波の受信が可能であり,通信不良対策に寄与することが示唆された.
【結論】
垂直降下アンテナを追加する手法を開発し,実証計測を通して通信不良の減少に効果的であることが示唆された.