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[70] 歯科器材の添付文書の実態調査
医療機器の添付文書は,医療従事者などの使用者が適切に使用するために重要事項が記載された公的文書である.滅菌供給部門では再使用可能医療機器(以下RMD)を適切に再生処理するための根拠となる文書である.特に保管や保守・点検に関する記載内容は正しく理解しなければならない.そのため,再生処理方法を添付文書で確認し再生手順を整備していくことになるが,歯科器材の確認において,消毒方法しか記載されておらず再生処理に窮することが多々あった.一方,「医療現場における滅菌保証のガイドライン2021」および「医療現場における滅菌保証のための施設評価ツール」が発行され,再生処理の適正化,手順の明示化がより強く求められるようになった.そこで,業務再評価の基本資料として添付文書を再確認することとし,現場が求めている情報との乖離の有無,記載情報の具体性を調査した.対象は当院材料部で再生処理している歯科器材211種とし,添付文書内「保守・点検に係る事項」に記載の洗浄・滅菌に関して調査した.あわせて記載に応じ取扱説明書の内容も調査した.その結果,洗浄方法について記載があったものは47件であった.滅菌については医療現場でおこなっている滅菌条件と異なる条件が示されているものが12件,乾燥をおこなわないように指示があるものが3件であった.添付文書に加えて取扱説明書の参照が53件であった.ガイドラインでは再生処理の基礎情報は,添付文書・取扱説明書等を含めメーカから入手することとなっている.しかし,今回の調査から,現場が求める情報と乖離があり,基本情報とすることができない添付文書があることが明らかになった.また,RMDの再生処理を検証したとは思えない,あるいは,医療現場での再生処理を考慮していない内容のものも見られた.器材を適切に再生処理するために,添付文書には医療現場に即した情報が記載されることが期待される.