第98回日本医療機器学会大会

講演情報

教育講演

教育講演3 ガイドライン2021・第1章を読み解く

2023年7月1日(土) 09:00 〜 09:40 第1会場 (アネックスホール F201+F202)

座長:久保田 英雄(東京医科歯科大学病院)

09:00 〜 09:40

[教育講演3] ガイドライン 2021・第1章を読み解く

小久保 安朗 (福井大学医学部附属病院 手術部・滅菌管理部・物流管理部)

ガイドライン2021について医療現場で働くスタッフに尋ねると、「難しくてよく分からない」、「ページ数が多すぎてなかなか読めない」、「第1章から読み始めたが、すぐに読むのをやめた」、「私は第1種滅菌技師になるつもりはないので読んでいない」、「ガイドラインを全て遵守することは理想的であるが現実的には無理」といったネガティブな意見と、「各章に統一感があって読みやすい」というポジティブな意見があった。演者の個人的な印象であるが、医療現場で洗浄・滅菌に携わるスタッフの多くが、ガイドライン2021は難解で、洗浄・滅菌マニアが読むものであると考えているように見受けられた。
一方、ガイドラインは、病院の規模や地域といった理由で独自の方法で洗浄・滅菌業務をおこなうこと、異なる基準で滅菌保証をおこなうことは好ましくないという考えの基に執筆・編集されている。どのような規模の病院でも、同じ基準で滅菌保証がおこなわれなければ、患者の不利益につながってしまう。また、日本という国レベルでも同様で、日本だけの独自の基準ではなく、世界的に標準的な方法を用いることが望まれる。このためガイドラインは、国際標準機構(ISO)で定められている方法・基準が用いられている。つまり、ガイドラインの方法で洗浄・滅菌、滅菌保証をおこなえば、世界標準の方法で業務をおこなっていることになる。内容が難しいからといって、簡単に読むことができるように記載内容のレベルを下げることは日本の滅菌のレベルを下げることにもつながりかねない。
ガイドライン第1章は、滅菌供給業務の総合的管理について述べられており、本文はわずか6ページ、附属書を入れても21ページのボリュームである。ここでは、品質マネジメントシステム(QMS)とバリデーションのわずか2つの項目について述べられているだけである。QMSは、洗浄・滅菌について何も知らない管理者でも、この部分だけ理解していれば、中央材料部の業務管理を合理的におこなうのに役立つ部分である。また、バリデーションの部分を理解すれば、洗浄・滅菌の各論は、全てこの型どおり展開されているので、(紋切り型で面白くはないが)各論を読み進める際に大いに役立つ。
このような重要な章であるにもかかわらず、この章から読み始めてしまったために、ガイドラインを読むことを諦めてしまった人もいる。改めて第1章の最初のページを開くと、QMS、JIS Q 13485、ISO 13485、AAMI ST90、QMS省令の文字がちりばめられ、ここで挫折する。わずか2分でガイドライン終了となってしまう。本講演では、このように挫折してしまった中央材料部の管理者、滅菌業務をおこなうスタッフ、洗浄・滅菌器の保守点検をおこなう人たち、洗浄・滅菌に携わる全ての人に、第1章を理解していただくことを目的に、分かりやすく解説する。