第98回日本医療機器学会大会

Presentation information

Oral presentation

トレーサビリティ

トレーサビリティ

Sat. Jul 1, 2023 2:00 PM - 2:50 PM 第4会場 (アネックスホール F204)

座長:河村 秀樹(静岡県立こども病院)

2:40 PM - 2:50 PM

[T106] 手術器械の個体識別はなぜ必要なのか,器械を航空機部品に例えて解説する試み

中野渡 寛之 (㈲東奥電気)

【背景】
弊社は器械の個体識別用二次元コード,ダイレクトパーツマーキング(以下DPM)刻印技術研究とDPMバーコードリーダを開発している会社である.8年前に初めて手術現場における器械管理の状況を目の当たりにし,即座に個体識別の必要性を感じた.それからは安全と作業効率のバランスを考えながら,個体識別の普及に努めてきた.しかし,時代が平成から令和に移った今でも,個体識別は一部の中~大規模病院でしか導入されていない.普及しない要因は,医療関係者の多くが個体識別の必要性を感じていないことにある.本発表は個体識別の必要性について,器械を航空機部品に例えて解説する試みである.
【目的】
器械個体識別の必要性を医療関係者に再認識して頂くことで,医療の安全と質向上を後押しする.
【解説】
安全工学の世界では,航空機の運航と手術のオペレーションはハイリスク分野に位置付けられており,それらの要素である航空機部品と手術器械は共通点が多い.具体的には以下の5点が共通点として挙げられる.1.発生リスクが人命に直結する.2.気圧変化や高温冷却が繰返されることによる金属疲労(膨張収縮)の蓄積.3.水分・塩害・アルカリ・酸等による化学的な悪影響を受ける.4.数年から十数年の長期間に渡って,ほとんど外部監査を受けずに再利用される.5.管理の質が就航率(オペ回転率)に影響する.航空機部品は信頼性工学による統計データの分析結果から,部品ごとに使用年限や飛行時間限度が決められており,性能上の問題がなくても既定の時間,使用回数に達すれば予防安全措置として交換される.その根拠となるのが個体識別である.従って手術の安全を担保するためには,器械の個体識別をおこない使用履歴データを蓄積していくことが必要なのである.
【結言】
今回は器械を航空部品に例えて個体識別の必要性を解説した.本発表をきっかけとして,一人でも多くの方がこの課題に関心を持って頂ければ幸いである.