第99回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

技術開発/改良

技術開発/改良

2024年6月22日(土) 14:00 〜 15:00 第4会場 (アネックスホール F204)

座長:中島 章夫(杏林大学)

14:30 〜 14:40

[118] セルソーターを用いた単一細胞内多元素同時高速分析システムの開発

福智 魁1, 山路 周1, 清水 祐哉1, 八井田 朱音1, 沖野 晃俊1, 前本 佑樹2, 青木 元秀2, 梅村 知也2 (1.東京工業大学未来産業技術研究所, 2.東京薬科大学生命科学部)

単一細胞内の微量元素分析が実現すると,創薬や再生医療分野の発展に貢献できると期待されている.我々の研究室では,細胞一つを微小な液滴(ドロプレット)に封入して誘導結合プラズマ質量分析計に導入する,単一細胞内元素分析システムを開発している.このシステムでは,高感度かつ高速な分析の実現のために,セルソーターを備えたフローサイトメーターで細胞を含むドロプレットを射出・分類し,ドロプレットの溶媒を赤外線で気化除去したのち,誘導結合プラズマ飛行時間型質量分析装置に導入して多元素同時分析をおこなう.
フローサイトメーターでは,マイクロ流路内を流れる細胞懸濁試料にレーザを照射し,細胞の有無,サイズ,種類などを測定する.この結果に応じて各ドロプレットに正から負までの電荷を付与する.電荷が付与されたドロプレットは高電圧を印加した電極板で軌道が曲げられる.この機能を用いて目的の細胞が含まれたドロプレットのみを選択的にプラズマに導入する.また,導入頻度を調整することで質量信号の重畳を防止する.
脱溶媒装置では,ドロプレットが飛行する石英ガラス管の外側から赤外線を照射することで液滴を加熱し,溶媒を気化させる.そして,加熱部下流の冷却部で,蒸発した溶媒を凝集,除去する.これによって乾燥した細胞のみをプラズマに導入してイオン化し,多元素同時分析が可能な飛行時間型質量分析装置に導入する.
ドロプレット加熱条件の検討実験では,ドロプレットのキャリアガス流量が0.1L/minのときに最大で1秒間に200個のドロプレットを脱溶媒できたのに対して,0.5L/minでは最大400個まで脱溶媒することができ,キャリアガスの流量を増やすことで,脱溶媒効果が向上できることを明らかにした.
発表では開発した単一細胞内多元素同時高速分析システムの詳細と脱溶媒条件の検討結果等について報告する.