第99回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

手術室

手術室

2024年6月21日(金) 09:00 〜 10:10 第4会場 (アネックスホール F204)

座長:野田 剛広(大阪大学)

09:30 〜 09:40

[43] 鉗子選択行動に対するカラーマーカーの効果

松本 綾奈1, 山内 康司1, 金井 しのぶ2 (1.東洋大学大学院生体医工学専攻, 2.㈱マイステック)

【背景】
器械台の上には見た目やサイズの類似した手術器具が多く,器械出し看護師が選択を迷ったり取り違える可能性もある.カラーマーカーなど色分けを用いた医療事故対策として点滴バッグなどの報告があるが,鋼製小物など手術器具分野においてはその効果は明らかではない.
【目的】
そこで我々は,カラーマーカーなど色の付与が,鉗子を選択する行動に影響するのか,模擬的な実験により明らかにすることとした.
【方法】
被験者は非医療系の男女学生12名である.実験にはダイヤルおよび印字がそれぞれ赤・グレー・緑である,先端形状のみ異なる内視鏡外科手術用鉗子3種類を用いた.机の上にドレープを置き,作業面の平均照度を1,000lxへと調整し,この上に3種類の鉗子を置いた.被験者にはあらかじめ鉗子の形状と番号の呼び方を暗記させた.実験条件は「,色あり鉗子を番号で指示」「色なし鉗子を番号で指示」「色あり鉗子を色で指示」の3条件とした.なお「色なし」の条件設定は,ダイヤルおよび印字を覆い等で隠ぺいしておこなった.
被験者に対して選択する鉗子の番号または色名を指示し,それを被験者が手に取って台の上に置くタスクを,1つの条件につき9回おこなった.実験風景は撮影をし,後ほどこの映像を確認して鉗子選択時間(手に取ってもらう鉗子の指示の言い終わりから,指定された鉗子を手に取るまでの時間)を計測した.
【結果および結論】
鉗子選択時間にウィルコクソンの符号順位検定をおこなった結果,それぞれの条件間で中央値には有意な差が見られ(p<0.05),「色あり鉗子を色で指示」,「色あり鉗子を番号で指示」,「色なし鉗子を番号で指示」の順で鉗子選択時間が短かった.このことから,鉗子に色(カラーマーカー)があることは,器械出し看護師が素早く鉗子を手渡す助けになると考えられる.