教育支援

[56] 滅菌供給業務従事者への医療安全教育支援の在り方

足立 沢実¹, 橋本 素乃¹, 青崎 宜子¹, 大塚 有紗¹, 岡田 紗英¹, 田中 美香¹, 久保田 英雄¹, 久保木 修² (1.東京医科歯科大学病院 材料部, 2.スリーエムジャパン㈱医療用製品事業部)

滅菌供給部門は，医療の安全性と質を維持する上で重要な責務を担っている．しかし，滅菌業務従事者が業務手順を守らなかったことによるインシデントが後を絶たない．そのため，手順遵守を阻害する要因を明らかにし，病院職員が取り組むべき滅菌業務従事者に対する医療安全につながる教育支援について検討をおこなうこととした．インシデントレポートから手順遵守を阻害する要因を抽出し特性要因図を作成し分析した．また，委託業者による医療安全教育の実態調査と「職場における安全行動尺度」を含むアンケート調査を実施した．それらを基に，病院職員による滅菌業務従事者に対する教育支援の在り方と具体的な教育支援方法について検討した．その結果，滅菌受託業者による医療安全教育には「手順遵守の必要性」が含まれておらず，病院側が考える「手順遵守の必要性」の認識と齟齬があった．手順遵守を阻害する要因として「当事者（知識・技術）」「当事者（行動）」「手順書（内容・管理）」「組織の姿勢・教育体制」が抽出された．「職場における安全行動評価尺度」の安全行動の合計得点において，滅菌業務経験年数が６年以上の平均は120.20±19.90，６年未満は99.89±15.88であり経験年数６年以上の方が有意に高かった（p＜0.05）．役職の有無，関連資格の有無，手順逸脱経験の有無では，平均点は「役職あり」「関連資格あり」「手順逸脱経験なし」の方が高かったが，有意差は認められなかった．病院側による教育支援の在り方は，
「業務委託従事者への教育支援をおこなうことの重要性」，「委託従事者の医療安全教育に対する評価を病院側が実施することの意義」，「滅菌供給部門の医療安全文化の醸成」が挙げられた．具体的教育支援として，「手順遵守定着にむけた医療安全教育方法の検討と開催支援」，「インシデントの原因分析や再発防止策検討，再発防止策の実施評価への参加」などを継続的かつ定期的におこなう必要がある．